クリックテック・ジャパン カントリーマネージャー 北村守氏は、2019年の年頭所感を発表した。
新年明けましておめでとうございます。
2019年のラグビーワールドカップ、さらに翌年の2020年には東京オリンピックと、世界中の人々が日本を訪れる機会が控えています。このようなマイルストーンとなるイベントは、新年のあいさつや新しい元号の制定と同様、ものごとがいかに速く変化していくかを痛感させます。変化の原動力は、多くの人が理解できないほどの速度で進歩する新しいテクノロジーです。急激な変化は職場や社会、家庭など私たちの日常生活のあらゆる場に登場し、すべての人々に影響を与えます。
新たな技術進歩の時代を形成する要因のひとつとして、データの重要性が挙げられます。今日、情報の寡占化が進み、十数社の市場を牽引する大企業だけが巨大な規模のデータセンターを利用し、データとAIの領域拡大競争に参加して、さまざまな産業に影響を与えています。データとアナリティクスが集中化するか分散化するかは、21世紀の社会がどのように発展するかに影響を及ぼす、特に重要な問題のひとつかもしれません。
しかし、この問題がどう帰結するにせよ、現実問題としてデータを利用し、分析し、理解する個人の能力の必要性は急速に高まり、ことばの読み書きと同等の必須スキルとなりつつあります。
Qlikは、個人がデータを利用し、分析し、それが成功につながる平等な競争条件を提供したいと考えています。Qlikは2018年、世界規模で「データ・リテラシー・キャンペーン」をスタートさせました。個人と組織が自信を持ってデータを理解し、分析し、利用できるようにするというQlikの使命を実現するためのプロジェクトです。
私たちが教育と能力向上に向けた活動を通じてデータ・リテラシー向上のキャンペーンを続ける間も、2019年にはさらに広い範囲に影響を及ぼす技術トレンドとイノベーションが現れるでしょう。これらは、個人と組織がデータを利用する方法、使用するプラットフォームとツールに影響を与えていくはずです。以下の3つの推測とトレンドは、新しい「ポストモダン・プラットフォーム」の出現につながる流れのごく一部です。
1. すべてのアナリティクス・データの「シングル・ビュー」がついに実現
2019年には、「データを1カ所にまとめる」動きが加速し、「データのシングル・ビューを実現する」ことに焦点が移るでしょう。すべてのアナリティクス・データを一覧表示する「シングル・ビュー」機能はかつてなく重要になっています。今や私たちは、さまざまな方向から、さまざまな速度とフォーマットを通じてデータを得ており、データ時代における能力向上と成功のためには、データをコントロールできるかどうかが重要な基準のひとつになるでしょう。
問題は、これまではシングル・ビューの実現に多くの努力が必要だったことです。苦労してすべてのデータをひとつの場所(網羅的なデータウェアハウスやデータレイクなど)に格納しても目標は実現できません。また、今はクラウドについても同様の現象が起きています。
一見、不可能なことにも思えます――新しいデータは常に発生し、ソースの段階でデータを結合したり分析したりすることが、目まぐるしく変化する世界において必須の敏捷性をもたらすのですから。これまで、データのサイロ化とガバナンスの問題を生んでいた要因ともなります。
しかし、2つの大きなトレンドが状況を変え始め、データを今ある場所に置いたままですべてのデータのシングル・ビューが可能になりました。第一は、多数のベンダーが集まってデータモデルを規格化するようになったことです。つまり、クラウドベースのデータソースが一貫したフォーマットになりやすくなったということです。
第二にさらに重要な点は、エンタープライズ・データカタログの出現です。ハブの形で利用できるデータ・カタログは、分散したデータ資産全体に対する監査を可能にし、データをショッピングするようなマーケットプレイス体験を実現します。またハブを共有、協力して利用するユーザーが増えるほど、企業にとっての価値も高まります。さらに、データ・カタログによってアナリティクス戦略をエンタープライズ・データ管理戦略とリンクさせることが可能になります。
トレンド:2019年、「データを1カ所にまとめる」動きが加速し、「アナリティクス・データのシングル・ビューを実現する」ことに焦点が移るでしょう。
2. 外部エコシステムがイノベーションを加速する
ひとつの会社の中で、テクノロジーを中心とするイノベーションを実行できる人材には限りがあります。しかし、強力なエコシステムがあれば、会社の外からイノベーションをもたらすことができる人材の数は無限大となります。内部でのイノベーションには、緊密な統合性というメリットがあります。しかし、ビジネスにおける課題の現場に近い方々は、もっと効果的に文脈に沿ったビジネス価値を示し、アナリティクスの活用法においても差別化を進めることができるはずです。これまでのような閉じた形の汎用BIツールを使用する場合、これは不可能でした。
今後は、パートナーや顧客と連携できるエコシステムを備えたオープンなプラットフォームが、次第に閉じたプラットフォームに取って代わるでしょう。2019年、市場はオープンAPIや拡張機能は必須であると判断し、エコシステムを備えたオープンなプラットフォームによるイノベーションは、内部だけでのイノベーションと比べて2倍の速度で進むでしょう。
この流れは、イノベーションに対するサポートなし(unsupported)の状態から認定(certified)する状態に、さらにはすぐに利用・サポート(supported out of the box)する状態になることで、外部から内部への拡張のパイプラインがさらに強力になります。これこそが、エコシステムのイノベーション効果です。
トレンド:2019年、外部との連携によるイノベーションは、内部だけでのイノベーションと比べて2倍の速度で進むでしょう。
3. データ・リテラシーが新たな企業KPIに
データ・リテラシーの重要性が高まっていますが、最近まで具体的には認識されていませんでした。2019年、データ・リテラシーは企業を診断する重要なパフォーマンス指標(KPI)のひとつとなるでしょう。データを読み取り、処理し、分析し、議論することが重要だということは誰もが分かっていますが、どこから手をつければ良いかが課題とされていました。基本の学習から必要な方がいる一方、データ専門家など、さまざまな課題が無いと退屈してしまう方々もいます。昔からの格言に「測定できないものは管理できない」というのがあります。ですから、組織のデータ・リテラシーを向上させるには、まずその企業が一定の尺度の上でどのあたりに存在しているのかを診断する必要があります。
そこで、データ・リテラシーを測定し指数化する新しい手法が考案されています。この手法を使えば、個人も組織も、より正確に的を絞ってスキル向上を目指すことが可能になります。さらに興味深いのは、各企業のデータ・リテラシー・スコアが算出できるようになったことです。この手法が特に注目されるのは、調査当初のデータだけでも、企業のデータ・リテラシーと企業業績の数値との間に相関関係があることが分かるからです。たとえば粗利益、資産利益率、自己資本利益率、純利益率などです。この相関関係は、データ・リテラシーを主流の指標に押し上げる決定打となるのでしょうか?
データ・リテラシーとは要するにボトムアップ式にスキルを上げていくことであり、また、データ・リテラシーがKPIのひとつになれば、CDO(Chief Data Officer)をはじめとするエグゼクティブ層も戦略的な差別化のためのイニシアチブとして、トップダウンで会社全体におけるデータ・リテラシーの向上を命じやすくなるでしょう。今後は、企業のデータ・リテラシー・スコアが高いことが、優秀な人材採用のひとつの基準になっていくでしょう。
:2019年、データ・リテラシーは企業における重要パフォーマンス指標(KPI)のひとつとなるでしょう。
今年が、皆様にとりまして実り多き1年となりますことを、心よりご祈念申し上げます。