アクセルスペースの地球観測衛星「GRUS」が12月27日(日本時間)、ロシアのボストチヌイ宇宙基地より打ち上げられた。主衛星の「カノープスV」などを搭載したソユーズロケットは正常に飛行し、衛星を所定の軌道に投入。同社はこの日、本社があるビルの1階でパブリックビューイングを開催、集まった関係者が打ち上げを見守った。
GRUSは重量100kg級の超小型衛星ながら、2台の反射望遠鏡を搭載しており、2.5mの地上分解能で、幅57km以上という広い範囲の撮影が可能。同社はこのGRUSを数10機打ち上げ、衛星コンステレーションによる地球観測網「AxelGlobe」を構築する計画だ。今回のGRUS初号機はその1機目で、2020年に追加で2機を打ち上げる予定。
同社は2008年に創業し、今年でちょうど10年。これまでに3機の衛星を打ち上げた実績があり、世界初の商用超小型衛星となったウェザーニューズの「WNISAT-1」とその後継機「WNISAT-1R」、地球観測衛星「ほどよし1号機」は現在も運用中だ。
打ち上げを前に、挨拶に立った同社代表取締役CEOの中村友哉氏は、「宇宙を普通の場所にしたい」というカンパニービジョンを紹介。「宇宙は特別で遠いという印象があるかもしれないが、宇宙データはもっと我々の暮らしに役立つものになる。それを我々の超小型衛星で実現したい」と意気込む。
中村氏とともに、同社を創業したメンバーの1人であるCTOの宮下直己氏は、これからの10年を「アクセルスペースの第2章」と表現する。GRUSはその節目となる、象徴的な衛星だ。これまでは、顧客のために衛星を作るメーカーであったが、GRUSシリーズはすべて自社衛星。顧客に提供するのはハードウェアではなく、ソリューションだ。
宮下氏は「AxelGlobeは地球を毎日観測するプラットフォーム。毎日のトレンドがアーカイブされていくので、今日の変化が全地球的に分かる」と説明。「経済や農業など各分野での予測が可能になる。天気予報と同じように、AxelGlobeも5年後10年後には当たり前のように使われるようになるだろう。何より私が使いたい」と期待を述べた。
AxelGlobeは地球を丸ごと観測するので、当然ながら地球規模のビジネスになる。同社CBDOの山崎泰教氏はほとんど日本にいないほど海外を飛び回っているそうだが、AxelGlobeへの期待を肌で感じているという。同社は現在、社員の1割がビジネスチームとのことで、事業開発にも力を入れているところだ。
GRUS初号機は、同日13:30にロケットから分離。夜になって初めて日本上空を通過し、22:40、衛星からの電波を受信し、状態が正常であることを確認した。今後、初期運用を進め、最初の撮影画像は1月中にも公開したいとのことだ。