KDDIは12月25日、九州大学大学院工学研究院 塚原健一教授を研究責任者とする7機関が参画する共同研究開発チームにて、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期の課題の1つ「国家レジリエンス (防災・減災) の強化」のうち「市町村災害対応統合システム」の開発に対して提案を行い、採択されたと発表した。

今回の研究開発では、災害時の避難判断や日常時の訓練実施に関わる課題を抜本的に解決するため、最先端のAIやIoT技術を取り入れ、避難判断に必要となる「情報の欠落ゼロ」「避難勧告等の発令の出し遅れゼロ」、地区単位などの小エリア発令による「住民の逃げ遅れゼロ」、意志決定・対応能力向上のための訓練体制の構築による「市町村が対応できないがゼロ」の4つのゼロを可能とする統合システムを開発し、国内すべての市町村へ実装することにより、地域住民の「犠牲者ゼロ」の実現を目指すという。

  • 市町村災害対応統合システム開発の概要

    市町村災害対応統合システム開発の概要

具体的には「避難判断・誘導支援システムの開発」「緊急活動支援システムの開発」「訓練用災害・被害シナリオ自動生成システム」の3つの研究開発目標を掲げている。

避難判断・誘導支援システムの開発では、洪水・高潮・土砂災害などのリードタイム付き災害を想定し、市町村長が住民に対して行う避難勧告・指示等の発令判断する際、ビックデータ技術、AI技術を活用してタイムリーに、またその発令エリアを的確に設定できるよう支援するシステムを開発。

緊急活動支援システムの開発に関しては、避難判断・誘導支援システムの開発と連携し、災害時における緊急活動を支援する情報を提供するシステムを開発する。

訓練用災害・被害シナリオ自動生成システムについては、システムを利用する「人」の能力を向上させる仕組みを組み込むため、実際に訓練を行うことで惹起されるシステム(そこに科学的な知見を与える研究者や実務者)と人とのコミュニケーションの中で、利用者が災害の発生・進展過程、意思決定・対応方法を理解・習得可能な訓練用基盤を構築。

研究開発チームの役割として九州大学は全体統括 (運営委員会の運営、工程管理、避難判断・誘導支援システム開発総括、緊急活動支援システム総括、シナリオ自動生成技術開発・訓練用基盤開発総括、社会実装総括)を、河川情報センターは事務局および避難判断・緊急活動に起因する災害要素の抽出、避難判断・誘導支援システムの開発と実装、および緊急活動支援システムの実装を担う。

また、KDDIは位置情報データの提供、ハザード推定の開発と実装および災害時需給対応に供する支援マッチング機能の開発と実装を、応用地質は避難判断および緊急活動支援のためのハザード情報生成技術の開発、防災IoTモニタリングの技術開発と社会実装を、防災科学技術研究所はシナリオ自動生成技術開発と訓練用基盤の構築を、千葉大学はマルチハザード・インタラクティブ災害・被害想定サービスの開発を、兵庫県立大学は判断・意思決定能力を強化する人材育成・訓練ツールの開発をそれぞれ担当する。

なお、KDDIは、2019年のシステム実用化を目指している、IoTおよびビッグデータ分析の最新技術を活用した「国・自治体向け災害対策情報支援システム」に関する知見を同研究開発にも活用していくという。