富士通は12月21日、量子現象に着想を得た、組合せ最適化問題を高速に解くアーキテクチャ「デジタルアニーラ」を活用した「FUJITSU Quantum-inspired Computing Digital Annealer(デジタルアニーラ クラウドサービス)」において第2世代のサービスを国内で提供開始した。
新サービスにより、工場のフロア全体の生産ライン最適化、中分子クラスを対象とした創薬の分野など、より複雑な課題に適用することが可能だという。
同社では近年の実社会における、さまざまな要因の組み合わせを考慮しつつ最適解を見つけ出す組合せ最適化問題に対して、富士通研究所は組合せ最適化問題専用のアーキテクチャとしてデジタルアニーラを開発し、5月に扱う問題の大きさを表す規模1024ビットに対応したサービスの提供を開始。
しかし、より大規模で複雑な問題を扱うには規模・精度の技術向上が必要となるため、高性能プロセッサ開発で培った超高密度回路集積の技術を用いることで新たなデジタルアニーラ専用プロセッサ「Digital Annealing Unit(DAU)」を開発した。
これにより、ビット間全結合の規模を最大8192ビットへ、結合精度を16ビットから最大64ビットの1845京階調まで拡張することができる第2世代のサービスとして提供し、大規模な問題への適用を可能としたほか、従来のデジタルアニーラの第1世代と比べ、処理速度が100倍に向上したという。
2018年度中に北米・欧州、その後はアジアにも順次展開を予定し、新サービスにより、製造・金融・物流・創薬など、より複雑な社会や企業の実課題への適用が可能となり、さまざまな業種・業務領域での活用を見込んでいる。また、第2世代に対応したサーバをデータセンターに設置して利用できる「FUJITSU Quantum-inspired Computing Digital Annealer オンプレミスサービス(デジタルアニーラ オンプレミスサービス)」を2019年2月から提供を開始する。
主な特徴として「ビット間全結合、および世界最高レベルの規模・精度を実現」「デジタル回路による安定稼働」「自動チューニングのモードを選択可能」の3点を挙げている。
ビット間全結合、および世界最高レベルの規模・精度を実現することについては、ビット間におけるすべての結合の強さを扱うことができる全結合型の設計を採用し、8192個のビット値が全結合で相互接続されている。ビット間の結合の強さを最大64ビットの1845京階調で細かく表現できるため、現行のイジングマシンや量子アニーリングマシンでは扱うことができなかった複雑で大規模な問題も解くことを可能としている。
デジタル回路による安定稼働に関しては、デジタル回路を用いていることからノイズの影響も受けにくく、特別な冷却装置を用いることなく、室温で安定動作させることができるという。
自動チューニングのモードを選択が可能な点については、デジタルアニーラで組合せ最適化問題の解を求めるには、問題に応じて最適な制御パラメータを決定する必要があり、専門的な知識が必要とするため演算中の状態に基づいて制御パラメータを調整する技術を組み込むことで、自動チューニングの機能を実現した。同機能により、デジタルアニーラの制御パラメータを調整することなく、解を得ることを可能としている。
今後、富士通研究所が開発した大規模な問題への適用を可能とする問題分割技術(注2)などにより、将来的に100万ビット規模の大規模な組合せ最適化問題への対応を目指し、創薬、化学、製造、交通、金融、物流などの幅広い分野のビジネスに貢献していく方針だ。
また、11月にカナダのバンクーバーで事業を開始したAIビジネスをグローバルに展開する新会社のFUJITSU Intelligence Technologyが牽引し、商品・サービスを各リージョンに展開することで、デジタルアニーラの適用拡大を目指す。