KDDIとテラドローン、セコムの3社は12月18日、埼玉スタジアム2002の協力を受け、モバイル通信ネットワーク(4G LTE)および人物検知機能に対応したスマートドローンによるスタジアムでの広域警備の実証に成功したと発表した。

3社は、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)」における「警備業務に対応した運航管理機能の研究開発」として、今年3月に神奈川県内のレジャー施設において複数のドローンを用いた広域施設の遠隔巡回警備の実証実験を行っている。今回の実証も同プロジェクトの一環として実施した。

冒頭、セコム 技術開発本部 開発センター サービスロボット開発G統括担当 兼 開発統括担当 ゼネラルマネージャーの尾坐幸一氏は「スタジアム警備における課題は、入退場時間帯と競技開催時間帯、競技開催期間と未開催期間では混雑するエリア・状況が大きく変化するため固定監視カメラによる監視では限界があった」と指摘。

  • セコム 技術開発本部 開発センター サービスロボット開発G統括担当 兼 開発統括担当 ゼネラルマネージャーの尾坐幸一氏

    セコム 技術開発本部 開発センター サービスロボット開発G統括担当 兼 開発統括担当 ゼネラルマネージャーの尾坐幸一氏

実証実験では、高高度で広域監視する俯瞰ドローンがAIを活用した人物検知機能により、リアルタイムに不審者を自動検知し、その位置情報を特定。

また、地図と連動した運航管理の指示により、低高度で巡回監視する巡回ドローンが不審者のもとに自動で急行し、監視センターに警告を通知する。今回はリアルタイムの不審者検知を実現するため、それぞれのドローンにAIを搭載し、処理を実施した。

  • 実証実験の内容

    実証実験の内容

  • 実証実験で利用した巡回ドローン

    実証実験で利用した巡回ドローン

実証実験の実施にあたり、KDDIとテラドローンは飛行エリア周辺の3次元地図情報、天気・風況情報、上空電波情報を運航管理システム上で確認できる新たな運航監視システムを開発、セコムは運航管理システムを警備で利用する際の要件定義を行った。

KDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部 商品1G 課長補佐の杉田博司氏は、開発した新しい運航監視システムについて「従来のLTE運行管理システムにAIシステムと電波・気象・地図連携機能を搭載した」と、説明する。

  • KDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部 商品1G 課長補佐の杉田博司氏

    KDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部 商品1G 課長補佐の杉田博司氏

AIシステムは不審者検知、位置推定、他ドローン連携、追跡で構成し、ドローンによる人物検知や位置推定などのAI処理を可能とするほか、運航管理システムと連携することで他ドローンとの連携を実現。

  • AIシステムの概要

    AIシステムの概要

また、電波・気象・地図連携機能は運航管理システムで上空電波情報表示、天気・風況情報表示、3次元地図情報表示を行う。

  • アプリ上で上空電波情報表示、天気・風況情報表示、3次元地図情報表示を行う

    アプリ上で上空電波情報表示、天気・風況情報表示、3次元地図情報表示を行う

ユーザーが扱う運航システムの上位に管理システムを構築し、ドローンの飛行に必要な各情報による飛行予約・承認機能を実装することで、事前に周辺環境の安全性を確認した上での飛行判断を可能としている。地図データはゼンリン、天気・風況データはウェザーニューズが提供する情報を活用した。

  • 各ユーザーの飛行計画を統合管理するシステムを構築し、ユーザー確認だけでなく、システム上でも飛行可否判断を行う

    各ユーザーの飛行計画を統合管理するシステムを構築し、ユーザー確認だけでなく、システム上でも飛行可否判断を行う

今回、AIおよび情報提供機能に対応した新たな運航管理システムを開発したことで警備への活用以上に設備点検や災害対策などドローンの活躍が期待される、そのほの分野への活用も可能になるという。

尾坐氏は「今年度はイベント開催日ではない警備の実証を行い、来年度はイベント開催日に実証を行う予定だ。また、将来的にはイベントの規模や内容により、ドローンだけでなく、ウェアラブルカメラや監視カメラの追加など、柔軟な監視システムの構築が必要となるため、5Gを活用することで高精細な映像をリアルタイムに警備本部に伝送することができるシステムを容易に構築することが可能になる」と今後の展望を述べていた。

  • 将来的には5Gの利用も視野に入れているという

    将来的には5Gの利用も視野に入れているという

以下は実証実験の動画。