東京大学大学院情報学環の中尾研究室(教授:中尾彰宏氏)とシャープは12月13日、NTTドコモや中国電力など、8企業・団体と連携し、AI/IoTを活用した「スマートかき養殖」の実証実験を同下旬から広島県江田島市で開始すると発表した。
実証実験は、広島県のAI/IoT実証プラットフォーム事業「ひろしまサンドボックス」に応募し、採択されたプロジェクト。
かき養殖における生産量の増加と生産効率の向上、漁業における通信インフラの利活用促進を目的に、養殖に関する広範囲かつ多様なデータを収集し、AI・機械学習により解析し、かき養殖に最適化したデータを漁業者が活用しやすい情報として配信するための通信インフラおよびサービスプラットフォームの在り方を検証し、期間は2021年3月末までを予定している。
実証実験は、広島県江田島市のかき養殖場に専用の次世代通信インフラ(プライベートLTE / LPWA)を構築して実施し、漁場のブイや養殖用の筏(いかだ)にセンサを設置し、海水の温度や塩分濃度などを遠隔監視するとともに、ドローンに搭載したカメラで上空からかきの幼生が多く生息する場所や潮流などを観測する。
これらのデータをクラウド上に収集・蓄積し、AIが分析・予測を行い、採苗に適した場所や時期を養殖業者のスマートフォンに知らせるほか、水中監視センサにより食害の原因となる魚が筏に近づいた際も検知して通知する。
これらのAI/IoTの活用により、離れた場所からかきの生育環境をリアルタイムに把握し、早期に対応することが可能となり、採苗不調や育成不良を抑制することで、かき養殖生産の効率化や業務効率の改善、労働負担の軽減が期待できるという。また、かきの養殖におけるノウハウを可視化することで、漁業の後継者育成にも貢献するとしている。
参画企業・団体と役割は、東大が無線ネットワーク(プライベートLTE/LPWA)構築、IoT独自無線デバイスの提供、データのAI分析、シャープがプライベートLTE対応スマートフォンの提供、かき養殖向け端末アプリケーションの開発、江田島市がテストフィールドの提供、内能美漁業協同組合と平田水産が実験実務、中国電力がかき幼生検出技術の開発、セシルリサーチがかき幼生検出技術の開発、NTTドコモがICTブイの提供、公衆回線インフラの提供、広島県立総合技術研究所がかき養殖、水産技術に関する助言をそれぞれ担う。
両者は、第5世代移動通信(5G)などの次世代通信インフラの時代の到来を見据え、今後もAIやIoTの技術を活用し、地域経済の課題解決につながるネットワークサービスや端末の創出を目指す考えだ。