ロシア国営宇宙企業ロスコスモスは2018年12月3日、ロシア、米国、カナダの宇宙飛行士3人を乗せた「ソユーズMS-11」宇宙船の打ち上げに成功した。約6時間後には国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングし、一時危惧されたISSの無人化は避けられることになった。

ソユーズによる有人飛行は、10月11日に前号機「ソユーズMS-10」が打ち上げに失敗して以来、約2か月ぶりとなった。

また、このとき宇宙に行けなかった2人の宇宙飛行士を、2019年2月にふたたび打ち上げることも発表された。

  • ソユーズMS-12宇宙船を載せたソユーズFGロケットの打ち上げ

    ソユーズMS-12宇宙船を載せたソユーズFGロケットの打ち上げ。10月の失敗以来、2か月ぶりの有人飛行となった (C) NASA/Aubrey Gemignani

ソユーズMS-11宇宙船

ソユーズMS-11宇宙船を載せた「ソユーズFG」ロケットは、日本時間12月3日20時31分(現地時間同日17時31分)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の第1発射台、通称「ガガーリン発射台」から離昇した。

ロケットは順調に飛行し、約9分後にソユーズMS-11を分離。宇宙船はその後、ISSに徐々に近づき、打ち上げから約6時間後の4日2時33分に、ISSの「ポーイスク」モジュールにドッキングした。

ソユーズMS-11には、ロシアのオレク・コノネンコ飛行士、カナダのデイヴィッド・サン・ジャック飛行士、そして米国のアン・マクレイン飛行士の3人が搭乗していた。コノネンコ飛行士は今回が4回目の宇宙飛行、サン・ジャック、マクレイン飛行士は今回が初飛行となる。

  • ソユーズMS-12宇宙船に搭乗した宇宙飛行士

    ソユーズMS-12宇宙船に搭乗した宇宙飛行士。左から、ロシアのコノネンコ飛行士、カナダのサン・ジャック飛行士、米国のマクレイン飛行士 (C) GCTC/NASA/Andrey Shelepin

一方ISSには、第57次長期滞在員として、今年6月から欧州宇宙機関(ESA)のアレクサンダー・ゲルスト飛行士、ロシアのセルゲイ・プロコピエフ飛行士、米国のセリーナ・オナン・チャンセラー飛行士が滞在中で、今回やってきた3人と合わせ、これから6人体制でのISS運用が始まる。

なお、ゲルスト飛行士ら3人は、12月20日に「ソユーズMS-09」宇宙船で地球に帰還する予定となっており、その後ISSは、今回ソユーズMS-11でやってきた3人での運用となる。この3人は第58/59次長期滞在員を務め、コノネンコ飛行士がコマンダー、サン・ジャック、マクレイン飛行士がフライト・エンジニアとなる。

ソユーズ宇宙船の打ち上げは、10月11日に前号機「ソユーズMS-10」が打ち上げに失敗して以来、約2か月ぶりとなった。

ゲルスト飛行士らが乗るソユーズMS-09は、2019年1月はじめで軌道上での運用可能な期限を迎えるため、それより前に帰還しなければならず、それまでにソユーズ宇宙船の打ち上げを再開できなければ、ISSを無人で運用せざるを得ないと懸念されていた。

今回のソユーズMS-11の成功で最悪の事態は避けられたが、ISSの宇宙飛行士の滞在計画や、ISSで行われる実験やメンテナンス作業の計画などへの影響は、今後も尾を引くことになりそうである。

また、10月のソユーズ・ロケットの失敗原因はほぼ突き止められたものの、それがなぜ起きたのかという背景までは完全に判明したとはいえない。さらに、ソユーズMS-09に謎の穴が開いていることが判明するなど、ソユーズ宇宙船の製造や検査の体制にも懸念が残る。

参考: 【連載】ロシアの「ソユーズ」ロケットはなぜ墜ちたのか - その顛末と背景

  • ISSに到着したソユーズMS-12宇宙船

    ISSに到着したソユーズMS-12宇宙船 (C) NASA

ソユーズMS-10で宇宙に行けなかった飛行士は来年再飛行

ソユーズMS-11の打ち上げ成功後、米国航空宇宙局(NASA)とロスコスモスは、ソユーズMS-10で宇宙に行けなかったロシアのアレクセイ・オフチニン宇宙飛行士と、米国のニック・ヘイグ宇宙飛行士を、次の「ソユーズMS-12」の搭乗員として任命し、ふたたび宇宙へ送り出すことを発表した。

ソユーズMS-10の失敗直後、ロスコスモスのドミートリィ・ロゴージン社長は、宇宙に行けなかったヘイグ、オフチニン飛行士を気遣って「2019年の春にも再度打ち上げてあげたい」というコメントをしていたが、それが実現することになった。

もっとも、これは感情的な理由ではなく、日本の「こうのとり」7号機が運んだバッテリーの交換など、2人がISSで行うはずだった作業があること、また2人はその作業のための訓練を受けており、新たに別の飛行士に訓練を施すより、2人を再度打ち上げたほうが確実かつ早く作業ができるからといった理由があってのことである。

  • ロスコスモスのドミートリィ・ロゴージン社長

    ロスコスモスのドミートリィ・ロゴージン社長(中央)と、ソユーズMS-10宇宙船の事故から無事に帰還したオフチニン宇宙飛行士(左)、ヘイグ宇宙飛行士(右) (C) Dmitry Rogozin/Roskosmos

このミッションはソユーズMS-10とは異なり、米国のクリスティーナ・ハンモック・コック飛行士と合わせた3人での飛行となる。コック飛行士はこれが初の宇宙飛行となる。

なおNASAなどは、打ち上げ失敗に終わった10月のヘイグ、オフチニン飛行士の飛行について、ISSへは到達できなかったものの、宇宙飛行士としてのミッションは果たしたということで1回の飛行とカウントしており、ソユーズMS-12での飛行はヘイグ飛行士にとって2回目、オフチニン飛行士にとって3回目の宇宙飛行になるとしている。

ヘイグ、コック飛行士は第59/60次長期滞在員のフライト・エンジニアを、またオフチニン飛行士は第59次長期滞在員のフライト・エンジニア、第60次長期滞在員のコマンダーを務める。

打ち上げは2019年2月28日、地球への帰還は2019年10月に予定されている。

  • ソユーズMS-12に搭乗する宇宙飛行士

    ソユーズMS-12に搭乗する宇宙飛行士。左から、米国のヘイグ飛行士、コック飛行士、ロシアのアレクセイ・オフチニン飛行士 (C) NASA

出典

ソユーズMS-11の打ち上げに関するロスコスモスのプレスリリース
ソユーズMS-11のISS到着に関するロスコスモスのプレスリリース
NASA Astronaut Anne McClain and Crewmates Arrive Aboard Space Station | NASA
NASA Astronaut Nick Hague Set for New Space Station Mission | NASA
Soyuz resumes crew flights after launch failure

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。

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