KPMGコンサルティングは12月10日、自然言語処理技術を活用したAI(人工知能)ソリューション「KNIGHT」の提供を開始した。同ソリューションは、日報や技術報告書など、ERP(基幹業務システム)に取り込まれていない企業の中に埋もれている情報や、勘や経験などの熟練者の知見(暗黙知)を自然言語処理によって「形式知」にすることで、知見を再利用できる仕組み。
Advanced Innovative Technology ディレクターの山本直人氏は、「現在、現場の若手が活用するAIソリューションが出回っているが、われわれはコンサルティングで培ったノウハウをもとに、経営層の意思決定を高度化するAIソリューションを提供する」と同社のAIソリューションに対するスタンスを語った。
山本氏は企業がデータに関して抱えている課題の1つとして、知見が多く含まれている非構造化データが十分に活用されていないことを挙げ、今回、ここに着目したと述べた。非構造化データが活用されていない大きな原因はSQLによって操作できないことだという。
「例えば、製造業では設計成果物は図面だが、完成に行きつくまでの試行錯誤や検証の結果は報告書としてまとめられており、ここには先人のノウハウが凝縮している。この日本文の自然こそが製造業の叡知にもかかわらず、暗黙知であるために活用されていない現状がある」と山本氏。
こうした報告書が活用されていないことで、手戻りの発生、熟練エンジニアの知見消失などの損失が生じているという。
昨今は製品仕様の複雑化に伴い、複数の部門にまたがる横の知識連携が必須となっている。こうした状況の下、「ベテランの暗黙知によって、過去の知見と業務をつなぐことはできているが、知識の横展開や引継ぎは困難になっている。さらには、ベテランが引退してしまうと、過去の知見を活用できなくなってしまう」と山本氏は指摘する。
そこで、「KNIGHT」では、社内外の大量の自然文から重要なキーワードを抽出し、キーワードの依存関係をグラフ形式に可視化する。これにより、広域にわたる関連性の把握や過去の経緯、課題解決までの検討事項の体系的な把握を実現する。KNIGHTの特徴の1つがグラフ構造の活用だ。
人は自分の関心の隣の情報まで把握することは難しい一方、情報は依存関係を持っていることから、「KNIGHT」は人の認知能力を情報の関連性を明らかにする。
利用方法は、1つのワードから関連するワードを可視化する方法と2つのワードを設定して課題に対する過去の取り組みを抽出する方法の2種類がある。
グラフ上のワードをクリックすると、そのワードが含まれている日本語文の原文を表示することができる。また、高度な利用法として、報告書を分析して、課題の含有状況をカウントして、ヒートマップとして可視化することも可能だ。
活用のシナリオとしては、「新規事業領域の発掘」「設計開発時の不具合対応」「サプライチェーンリスクの把握」などが想定されている。