独立系半導体研究機関のimecは、MOCVD法で成長させた二次元材料を用いたMOSFETデバイス構造を300mmウェハの表面全体に形成することに成功したと発表した。
グラフェンをはじめとする二次元材料は短チャネル効果がほとんどないため、CMOSデバイスの超微細化に道を拓く材料として注目されている。
今回の研究では、二次元材料として硫化タングステン(WS2)を選択したが、その理由としては、ほかの二次元材料と比較しても高いオン電流が得られ、高い化学安定性を持っているためだという。
MOCVDを用いたのも、300mmウェハ全体にわたって単分子層の精度で薄膜を形成でき、高い移動度が得られるためだが、MOCVDによる成長は高温で行う必要があり、高温処理が許されないデバイス表面には直接成長することはできなかった。
そのため、チャンネル材料であるWS2を別のシリコン基板上にMOCVDで成長させ、それをデバイス作製中のシリコン基板上に移植する必要があったが、二次元材料はデバイス形成ウェハへの接着性が悪く、かつ薄膜の厚さは0.7nnmと極薄であることもあり、技術的に非常に難しいプロセスとなっていた。
今回imecは、WS2薄膜の成長用基板から300mmウェハ上のデバイス表面への移植プロセスの開発にあたって、装置パートナーとして独SUSS MicroTec、材料パートナーとして米Brewer Scienceと共同で開発を行なうことで実現したという。
具体的には、最初にシリコンウェハ上に高温MOCVDでWS2薄膜を成長させたのち、そのシリコンウェハをBrewerが配合した材料を用いてガラスキャリア基板上に一時的に接着。その後、真空中でガラス基板上のWS2単分子薄膜を機械的に剥離してデバイス形成中の別のシリコンウェハに接着。最後にガラス基板をレーザ剥離を用いて除去することで、WS2単分子薄膜をデバイス構造上に形成したとする。
発表の場となったIEDMでは、チャンネル材料としてWS2を用いたほか、トップゲート絶縁膜にAl2O3、ボトムゲート絶縁膜にSiO2/HfO2/SiO2を用いたダブルゲートFETを300mmウェハ上に作成したとしている。。
なお、imecでは、二次元材料の採用の加速に向けた今後の主な課題として、性能を最大限に引き出すためにゲート誘電体のSiO2等価酸化膜厚(EOT)をさらに薄くする必要があるとするほか、WS2チャンネル内の欠陥を低減して移動度を向上させることも必要となるとコメントしている。