米IC Insightsは、2018年の半導体業界の設備投資総額が前年比15%増の1071億ドル(約12兆円)になるとの最終的な予測を発表した。
設備投資総額が1000億ドルを超えるのは史上初めてのことである。今年は半導体業界は好況で売上高が2桁成長を遂げる見込みだが、2019年の成長は1桁台の低いところまで落ち込むと予測されており、IC Insightsは、2019年の半導体設備投資総額は前年比12%減と2桁減の予測をしている。
2018年の半導体メーカー設備投資額ランキング・トップ5の設備投資合計額は、業界全体の設備投資総額の66%を占めると予想される。また、このトップ5の設備投資合計額は、2019年に前年比14%減とマイナス成長が見込まれているが、それ以外の半導体メーカーの設備投資の合計額はも同7%減とマイナス成長となる見込みである。
半導体メモリ市場はこのところ軟化してきており、少なくとも来年前半までは軟化傾向が続くと見込まれているので、世界3大メモリメーカーであるSamsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの2019年の設備投資合計額は、2018年の454億ドルから17%減の375億ドルに減る見込みである。
200億ドル超の巨額設備投資の継続を見込むSamsung
半導体売上高だけではなく設備投資額でも世界トップのSamsungの設備投資動向を見ると、同社の年間設備投資額がはじめて100億ドルをこえたのは2010年で、以降、2016年までの7年間は年平均120億ドルで投資を実行。2016年にこの平均をやや下回る113億ドルとなった後、2017年には設備投資を242億ドルへと2倍以上に急増させた。2018年の投資額は2017年からはやや微減となるが226億ドルという高いレベルに留まる見込みである。
Samsungのこの2年間の半導体設備投資合計額は468億ドルという驚くべき高額で、これはIntelとTSMCの2年間の設備投資の合計額(約484億ドル)にもほぼ匹敵する額である。
IC Insightsは、Samsungの2017年と2018年の大規模な支出は、将来的に大きな影響を与えるとの見方をしている。すでに始まっている影響の1つは、3D NAND市場における供給過剰である。このような供給過剰状況は、Samsungの3D NANDに対する巨額投資だけではなく、Samsungに対抗するライバル企業(SK Hynix、Micron、東芝、Intel)が一斉に投資したことでもたらされた。
Samsungは、メモリ市場の軟化により、来年の設備投資額を2割程度減少させるとIC Insightsは見ている、
前年比58%増の投資でメモリの増産を図るSK Hynix
DRAMとNAND市場が2018年第3四半期まで好調に推移したため、SK Hynixは2018年度の設備投資額を大幅に引き上げた模様だ。同社は今年1月、設備投資額を「少なくとも30%増加させることを計画している」と語っていたが、IC Insightsの11月時点での予測では、前年比58%増と大きく引き上げたとしている。
大きく伸びた分は、韓国の清州に建設中の3D NAND工場であるM15と、中国の無錫にある巨大なDRAM工場の拡張に充てられている。清州工場は今年末には開業する方向で準備が進められているほか、無錫工場も当初予定していた2019年の初めの開業を数か月早めて今年の終わりまでの開業を目指している。
同社の2019年の設備投資額は、メモリ市場の軟化により、Samsung同様、2割程度の減少となるとIC Insightsは見ている。
なお、半導体売上高、設備投資額ともに世界2位のIntelの2018年の投資額は、サーバやPC向けプロセッサの増産に向け、前年比32%増の155億ドルとなると予測されている。また、MicronもSK Hynix同様にメモリ増産のため、設備投資を前年比54%増と大きく増加させている。一方、TSMCはスマートフォン市場の不振や仮想通貨市場の失速で、年初から連続して売上高の下方修正を行ってきており、今年の設備投資額は前年比5%減と予測されているが、いずれの半導体メーカーも、2019年は設備投資を減額する見込みだという。