サイバーエージェントは11月30日、インターネット動画広告に特化した研究機関であるオンラインビデオ総研およびデジタルインファクトと共同で、国内動画広告の市場動向調査を行い、その結果を公表した。
同調査は8月~10月の間、動画広告市場関係者へのヒアリングや、調査主体・調査機関が保有するデータの分析、公開情報の収集などによって実施されたもの。インターネットを通して配信される動画広告の年間広告出稿額を推計し、市場規模予測を算出した。
2018年動画広告市場の背景
2018年はオンラインメディアにおける動画フォーマットの拡大と、ライブ配信を中心とする動画専門メディアの普及が進んだ。これに伴い、ユーザーによるオンライン動画視聴は、テレビ視聴と同様に日常的な習慣として定着しつつある。加えて、オンライン動画配信における有料サービスの利用者数も増加したほか、動画視聴環境は、あらゆるデバイスに広がりを見せている。
ソーシャルメディアにおける動画広告の活用は、静止画と同水準に到達。ユーザーは動画を視聴するだけにとどまらず、若年層を中心に、より双方向的なコミュニケーションの手段となりつつある。
企業における情報発信においても、動画はユーザーとの一般的なコミュニケーション手段として位置づけられ、媒体や広告フォーマット、広告クリエイティブなどさまざまな面で進展が見られる。
これらを背景に、2018年の動画広告市場は、前年に引き続き高い水準で成長を遂げる結果となった。
デバイス別、動画広告市場推計・予測(2017年~2024年)
2018年の動画広告市場は、昨年対比134%の1843億円に達する見通し。スマートフォン動画広告の需要は、昨年対比143%の成長を遂げ、動画広告市場全体の85%に。2020年には2900億円、2022年には4187億円、2024年には4957億円に達する見込みだ。
2018年は企業のマーケティング目的に合わせ、動画広告の媒体やフォーマットの選択肢が広がり、需要全体の拡大を促進した。先進的な取り組みを行う企業においては、媒体やフォーマットに合わせた動画クリエイティブを制作し、活用するなどの取り組みも進みつつある。
また、大手広告主を中心に自社製品・サービスのブランディングを目的にした動画広告の出稿が定着し、その需要は引き続き増加傾向にある。スマートフォンアプリのプロモーションを目的とする広告主の需要もまた、前年に引き続き大きく増加。広告商品の技術的な進化もみられ、需要の拡大に大きく寄与している。
広告商材別、動画広告市場推計・予測(2017年~2024年)
広告商材別に動向を見ていくと、2018年はインストリーム広告およびインフィード広告を中心に成長を遂げる一方、動画化が進む各媒体の特性に応じた、広告商品やフォーマットの多様化が進んだ。
具体的には、大手SNSなど従来インフィード動画広告を提供してきたサービスにおいて、新たにライブ配信コンテンツ向けのインストリーム動画広告の提供開始など、インストリーム動画広告需要の拡大に向けた提供者側の新しい取り組みが見られた。また、縦型フォーマットの提供が本格的に検討されるなど、ユーザーの動画視聴行動に最適なフォーマット提供に向けた研究や商品の開発が進んだほか、ゲームやコミックなどのアプリケーション内で提供される動画リワードなどの広告フォーマットの需要も拡大した。
動画広告市場の今後
今後は、通信環境のさらなる高速化により、ユーザーの動画視聴環境の改善がさらに進み、インターネット上における動画コンテンツの流通はさらに拡大することが予想される。これとともに、特徴的な動画媒体や動画広告フォーマットが登場し、広告主による動画広告のプロモーション活動は、さらに進展することが期待される。
その一方で、動画広告への社会的な関心も高まりつつあり、広告主やユーザーからは、動画広告の安心・安全な広告出稿環境の整備や、公正な広告流通に関するさらなる情報開示を求める声も聞かれるようになっている。今後、安心・安全な利用環境と、透明性の高い広告取引環境の整備に対する取り組みが進み、より大きな社会的信頼を得られることで、動画広告市場は引き続き高い水準で継続的に成長していく見込みだ。