ソフトバンクは11月30日、今年の5月にオープンした東京お台場の「5G×IoT Studio」をリニューアルし、プレス向けに公開した。
同施設は5Gなどのトライアル環境で、360平方メートルほどのスペースに、実験機器や周辺機器、エッジコンピューティングを想定した高性能サーバなどを設置し、さまざまな企業との新たなソリューションやサービス、プロダクトの共創を目指す。今回のリニューアルにあたっては、5Gのネットワーク環境を、4.5GHz帯から28GHz帯の周波数を使用したノンスタンドアローン標準仕様に構成を変更して、再構築した。
また、同じビルには、完全にシールドされた、実際に5Gの電波を利用できる実験設備もある。
Studio内には、製造業や建設業、エンターテインメント業、放送業、小売業など、業種別の5Gのユースケースをイメージしたデモンストレーションを新たに用意した。
製造業向けには、今年の3月に発表したソフトバンクと大成建設が行った、5Gによる建設機械の遠隔操作(力触覚伝達型遠隔操作)を体験できる。5Gによって、複数の映像を同時に見ながら操作でき、遅延も20ms程度おさえられ、映像と操作するアームのズレを感ることなく、操作できるという。
建設業では、遠隔地にあるMEC(Mobile Edge Computing)サーバの仮想GPUを利用して3D CADデータを処理、エンターテインメントでは、同じくMECサーバの仮想GPUを利用して、ゲームを行うデモを行っている。
さらに、放送業のユースケースとして、アルファコードとVRコンテンツの多視点切り替え配信のデモンストレーション環境を構築。京都の大江能楽堂で上演された「土蜘蛛」を撮影して舞台に向かって正面、左、左奥、2階席の4カ所から360度カメラで撮影した高精細な8K映像で構成されており、ゴーグルを付けた視聴者の見る方向に合わせて音が追随。ユーザーは8Kコンテンツを遅延なくスムーズに視聴できるとともに、違う視点の映像に瞬時に切り替えることが可能だという。
また、放送業向けには、アバターのリアルタイム生成を展示。ユーザーに取り付けた複数センサーから取得した骨格のデータと、スマートフォンから取得した顔の表情などのデータから、アバターをリアルタイムに生成し、動きをリアルタイムに反映する。
小売業向けには、カメラの映像から人の骨格を認識。認識した人の動線をリアルタイムで分析するとともに、顔認識データから予測した性別や年齢情報をベースに、ターゲットグループごとに動線やヒートマップを可視化。また、分析したデータを自律走行するロボットと連携させることで、それぞれの属性に応じたデジタル広告をロボットに表示して提案するといったデモンストレーションも行っている。
地域活性化などを目的とした可搬型5G設備「おでかけ5G」の試作機を展示
また、同施設では、域活性化などを目的とした可搬型5G設備「おでかけ5G」の試作機を展示する。「おでかけ5G」は、5Gの基地局とコア設備をセットにしたもので、設置したエリアにおいて、高性能でプライベートな5Gのネットワーク環境を構築できる。ユーザーに5G APIを提供し、セキュリティ設定やアプリの実装を可能にする。
ソフトバンク テクノロジーユニット 技術戦略統括 先端技術本部 先端事業企画部 部長 船吉秀人氏は、高速・大容量、高信頼・低遅延、多数同時接続という5Gのメリットを説明したのち、「IoTは飛躍的に伸び、データを高度化する。それを支えるのが5Gだ。ソフトバンクでは2020年から商業サービスを開始すべく、準備している。5Gはデータを転送するだけでなく、サービスを創出するネットワークだ。『5G×IoT Studio』は、5Gを知って、使い、共創を検討し、それによってGOTOマーケットを目指していくのがコンセプト。今後はソリューションプロバイダの連携の密にして、日本の発展に寄与していきたい」と語った。