富士通研究所は11月29日、第5世代移動通信方式(5G)で要求されている毎秒10ギガビット(Gbps)超の高速通信において、1枚のアンテナパネルで4人のユーザーへの同時通信を実現するサイズの装置を開発したと発表した。

  • 開発したアンテナパネル

5Gでは、電波エリアが比較的小さい基地局を数10mおきに配置する利用が想定されるため、どこにでも設置可能な小型化が求められており、現在の5Gのシステム構成は、複数の端末に同時通信する際にその端末分のアンテナパネルを用いる必要がある。

今回、128個のアンテナ素子からそれぞれ発せられる信号の位相(角度)を高精度に制御することで、信号間の干渉を抑え、1枚のアンテナパネルだけで4方向への同時通信が可能になった。また、水平・垂直の両方向に対して電波を可変することができ、通信エリア拡大に成功した。

これにより、これまで2枚以上必要だったアンテナパネルを、約13cm角のプリント板1枚に収めることができ、駅前やスタジアムなど人が多く集まる場所でも小型の基地局の設置による5Gの高速通信が可能になるとしている。

具体的には、アンテナ素子から発信される信号の位相を1度以下の精度で調整できる技術(特許登録済)を用いたフェーズドアレイチップを開発し、8個のアンテナ素子に対してフェーズドアレイチップを1つ配置した。

また、フェーズドアレイチップ間の位相差を検知する回路を実装することで、64~256個のアンテナ素子で構成されるどのサイズのアンテナパネルにおいても高精度な位相制御を実現。これにより、ある端末と通信する電波に対し、同時に通信している別の端末への電波が漏れこむ不要放射の差を20dB以上に保ち、10Gbps以上の大容量通信を1枚のアンテナパネルで行うことが可能になるという。

  • 開発した1枚のアンテナパネルで4ユーザーと同時に通信する装置の構成

今回開発した技術で、128個のアンテナ素子と16個のフェーズドアレイチップで構成された13cm角のアンテナパネルを試作し、1枚のアンテナパネルで1人当たり2.5Gbps(合計10Gbps)の高速通信を実現するとともに、4方向へのビーム多重ができることを確認している。