Amazon Web ServicesのCEOであるAndy Jassy氏は、同社の年次イベント「AWS re:Invent 2018」の基調講演において、ファイルシステム関連の新サービスとして「Amazon FSx for Windows File Server」「Amazon FSx for Lustre」「Amazon S3 Glacier Deep Archive」という3つの新しいサービスを発表した。
「Amazon FSx for Windows File Server」はWindowsユーザーの取り込みへ向けた高カスタマイズファイルシステム、「Amazon FSx for Lustre」は数千クライアントからの同時アクセス可能ファイルシステム、「Amazon S3 Glacier Deep Archive」は長期データ保存向けの新しいストレージサービスだ。
Amazon FSx for Windows File Server
現在、クラウドプラットフォームでWindowsを利用するクライアントは3割を超えると見られている。こうしたユーザーはクラウドプラットフォームで既存のWindowsアプリケーションがそのまま動作することを望んでいる。「Amazon FSx for Windows File Server」はこうしたユーザーに向けて、完全にWindowsファイルシステムと互換性のあるファイルシステムと提供するというサービスだ。Windowsを利用したいユーザーをAWSへ取り込む狙いがあるものと見られる。
Amazon FSx for Windows File ServerはWindowsファイルシステムの機能やプロトコルに加え、細かなパフォーマンス設定やチューニング、管理、セキュリティ設定、大規模ファイルシステム構築などの機能を提供している。これにより、用途に応じて適した性能のファイルシステムを作成して、コストを抑えながら最大の効果を得ることができる。
また、レプリケーションやフェールオーバー機能を設定できるほか、Microsoft DFSネームスペースを利用して最大で300PBというサイズのストレージを作成することもできる。柔軟性が高くかつ詳細な設定が可能なWindowsファイルシステムを提供することで、Windowsプラットフォームをクラウドに移行させたいユーザーにとって魅力的な選択肢となる。
Amazon FSx for Lustre
クラスタコンピューティングシステムで使われている分散ファイルシステム「Lustre」をAWSで利用できるようにしたサービスが「Amazon FSx for Lustre」だ。ペタバイトスケールのファイルシステムを構築することができ、高い並列アクセス性能とベタパイスケールファイルシステムへのサブミリ秒でのアクセスを実現している。数千といったレベルのクライアントから同時アクセスするような用途で能力を発揮するファイルシステムとなっている。
このファイルシステムは数分で作成可能で、完了すれば大量のクライアントからマウントして利用することができる。サービスそのものはフルマネージドであるため、ユーザーは管理する必要がない。スーパーコンピュータが利用している分散ファイルシステムを手軽に作成して利用できる点がこのサービスの最大の特徴と言える。大量のクライアントからのアクセスが必要となるファイルシステムの構築においては必須のサービスとなるだろう。
Amazon S3 Glacier Deep Archive
大容量データのバックアップにおいてはテープデバイスが使われることが多い。これはテープが大容量かつ価格メリットがあるためだ。テープデバイスは高速なランダムアクセスには向いていないが、大量のデータを保存しておく用途には適しているとされている。
「Amazon S3 Glacier Deep Archive」はこうしたテープデバイスの代替としての利用が想定されたサービスだ。大容量で長期的に保存しておく必要があり、さらにほとんどアクセスすることがないようなデータの保存に向いている。最大の特徴は価格の安さで、削除するわけにはいかないがほとんどアクセスすることがないといったデータを保存しておくことができる。ストレージの利用料金に頭を悩ましている場合は適切な候補となる。