ボストン・サイエンティフィック ジャパンは、急性膵炎の局所合併症である膵仮性嚢胞(PPC)および被包化壊死(WON)に対する内視鏡的治療専用システムとして膵臓用瘻孔形成補綴材「Hot AXIOSシステム」が、薬事承認を取得したことを明らかにした。
膵臓は食べ物の消化を助ける膵液を十二指腸に分泌するほか、血糖値をコントロールするインスリンなどのホルモンを血液の中に分泌するなどの役割を担っている臓器だが、消化液を分泌する臓器であるため、その消化酵素に膵臓自体が消化されてしまうことで、膵臓や関連する器官に急激な炎症、いわゆる「急性膵炎」を起こすことが知られている。
急性膵炎は近年増加傾向にあり、2011年の全国調査での患者数は約6万3000人で、重症な急性膵炎の場合、死亡率は10~30%ほどとも言われている。
また、急性膵炎が急性期を過ぎた後でも、膵液などの液体が溜まった膵仮性嚢胞や、膵臓や組織が壊死化した被包化壊死と呼ばれる局所合併症が発症することもあり、胆管ステントなど複数の処置具を併用した複雑な内視鏡的治療を行なう必要があった。
同システムは、ダンベル型の網目状の瘻孔形成補綴材と、先端部に通電カッティングワイヤを搭載したことで消化管壁の穿刺から補綴材留置に至る瘻孔形成手技を一期的に可能にしたデリバリシステムを組み合わせて用いるもので、補綴材の内腔径は体形などに合わせて、選べるように10mm、15mm、20mmの3種類を用意。広い径により、内視鏡の挿入のためのアクセスポートとしても利用できるため、瘻孔拡張を行わずにネクロセクトミーが可能になるという。
また、補綴材のダンベル形状は、高い把持力を発揮するためのもので、これにより、補綴材の移動および逸脱のリスクを低減することができるようになっている。さらに、補綴材全体を覆っているため、組織との癒着を防止でき、治療後に簡単に抜去することが可能だという。
なお、同システムは、使用に向けた講習プログラムを受講した医師が、治療に係る体制が整った医療機関にて用いることが薬事承認時の条件として定められており、適正使用指針が日本膵臓学会や日本消化器内視鏡学界、日本消化器病学界などから出されている。