11月26日(米国時間)、Amazon Web Services(AWS)の年次イベント「AWS re:Invent 2018」がラスベガスで開幕した。前夜の25日にはイベント「Monday Night Live」が開催され、さまざまなサービスが発表された。本稿では、同社のデータセンターとネットワークを効率的に利用するための新サービスについてお届けしよう。
AWSのデータセンターは150へ
クラウドベンダーの雄であるAWSはインフラへの投資を緩めることなく、世界中にデータセンターを開設し続けている。当初、十数カ所だったデータセンターだが、現在では150という規模にまで拡大している。個々のデータセンターには数十万台というサーバが収納され、データセンター間は十分な距離をおいて建設されている。物理的な距離を確保することで、被害や災害などの物理的なダメージに対する堅牢性を確保するためだ。
AWS Global InfrastructureのVice PresidentであるPeter DeSantis氏は、ネットワーク帯域を太くする方法としてこれまでと同じサイズのケーブルに倍のケーブルを収納するようにしたというアイディアを紹介した。これで消費する空間は同じまま帯域速度を倍に引き上げることができる。コストの削減にもつながっている。
データセンターを1カ所に集中させることなく世界中のリージョンに分散させることには、ローカルからのアクセス速度の向上に加え、1カ所にアクセスが集中することで発生するトラフィックジャムを軽減するといった利点もある。また、ネットワークを分散させることで、故障や災害に対して堅牢性を確保するという目的がある。クラウドサービスにおいてスケーラビリティと堅牢性の確保は必要条件であり、AWSはこうしたプラットフォームの投資を積極的に進めている。
AWS Global Accelerator、AWS Transit Gateway
続いて、DeSantis氏は「AWS Global Accelerator」と「AWS Transit Gateway」という2つの新しいサービスを発表した。これらは世界中に広がるAWSデータセンターとネットワークをより効率的に利用するためのサービスだ。複数のリージョンに対してサービスを提供していたり、複数のAWSアカウントをまたいでサービスを利用していたりする場合に、これらのサービスは効率化を提供してくれる。
AWS Global Acceleratorは、ネットワークのより適切なルーティングを実現する。サービスを素早く提供するには、最もネットワークアクセスが速いデータセンターを使う必要があるが、AWS Global Acceleratorはこれを実現する。より適切な経路を選び効率的な配送を実現する。特に世界中のリージョンに対してサービスを提供している場合に、効果を得ることが可能だろう。
一方、AWS Transit Gatewayは複数のAWSアカウントにまたがって複数のAWSサービスを利用している場合でも、管理されたTransit Gatewayに接続できるようにするというサービス。分散するサービスを管理されたゲートウェイに接続することで、エッジ接続を統合して管理することを実現する。つまり、多種多様なAWSのサービスをより効率よく管理することが可能になるというわけだ。
EC2インスタンスの上限引き上げ
AWSはEC2インスタンスの種類を随時増やしているが、Monday Night Liveでも新たなインスタンスが発表された。仮想CPUを強化したもの、メモリ容量を強化したもの、プロセッサの種類を増やしたものに加え、ベアメタルのモデル強化、NVMeストレージの強化、ネットワークの高速化などが行われている。
EC2の魅力の1つは豊富なインスタンスの種類にある。同じ種類のインスタンスであってもさまざまな選択が可能で、より適切なリソース構成のインスタンスをセットアップできる。目的に沿ったインスタンスをセットアップすれば、高い費用対効果が期待できる。
今回発表された新しいインスタンスはどれも既存のEC2インスタンスの上限を引き上げる方向のオプションだ。EC2インスタンスで高いリソースを選択する目的は、特定期間だけ高いリソースが必要になるといった場合が多い。自前でこうしたリソースを用意しようとすると、設置および運用場所の確保から機材の購入、ネットアップ、運用まで予算と人員の確保が必要になる。しかも、不要になれば費用対効果の低い買い物だ。しかし、EC2であれば、特定の期間だけこうした高いリソースを確保して利用できる。これがEC2で高いリソースを利用する最大の利点だ。