アクセルスペースの地球観測衛星「GRUS」がこのほど完成し、11月11日、射場への輸送を前に、フライトモデルがプレスに公開された。

GRUSは、大きさ60cm×60cm×80cm、重量100kg級の小型衛星。同社は最大50機のGRUSを打ち上げ、地球上の主要な地域の画像を毎日更新する「AxelGlobe」を構築する計画で、これはその最初の打ち上げとなる。

  • 同社のクリーンルームで公開された地球観測衛星「GRUS」

    同社のクリーンルームで公開された地球観測衛星「GRUS」

GRUSには、地上分解能が2.5mの反射望遠鏡を2台搭載。2台を並べて観測することで、幅57km以上という、広い領域を撮影することができる。大量の画像データを送信するために、200MbpsのXバンド送信機も搭載した。相乗り先のロケットや打ち上げ日についてはまだ発表されていないが、同社によれば、12月上旬に公表する予定だという。

  • 2台の望遠鏡が対角線上に並ぶ

    2台の望遠鏡が対角線上に並ぶ。奥に立っているのがXバンドアンテナ

AxelGlobeでは、すべての衛星を、同一の軌道面上に配置する。複数の衛星を使ったコンステレーション観測では、各衛星を任意の間隔で配置する必要があり、そのためには通常、推進系を利用することになるが、今回打ち上げるGRUS初号機には、自社で開発した高圧窒素のコールドガスジェットが搭載されているとのこと。

  • 中央に見えるのが高圧窒素のコールドガスジェット

    中央に見えるのが高圧窒素のコールドガスジェット

AxelGlobeの発表時、同社は最初の打ち上げ時期を2017年と説明していた。「改良を要する点が見つかった」ために1年延期していたが、AxelGlobeの完成時期は2022年のままで変更は無いという。ただ最終的な機数は未定で、「実際のデータの使われ方や、マーケットの反応を見極めながら、今後決めていきたい」(同社の中村友哉代表取締役)とする。

しかし今後、数10機もの衛星を製造していくとなると、同社のキャパシティだけでは難しい。外部の製造パートナーにアウトソースすることも検討しているそうで、その場合、来年前半には相手を決定し、"量産"を開始したいとしている。

初号機の打ち上げ後、順調なら3カ月程度でサービスの提供を開始する計画。画像の販売価格については未定だが、「中分解能の一般的な価格よりかなり安く出せるのでは」(同)とのことだ。

  • 今回打ち上げるのは初号機

    今回打ち上げるのは初号機ということで、衛星には「GRUS-1」の文字が

同社がこれまでに開発し、打ち上げた衛星は、「WNISAT-1」(2013年)、「ほどよし1号機」(2014年)、「WNISAT-1R」(2017年)の3機。また宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的衛星技術実証プログラム」で開発した「RAPIS-1」(小型実証衛星1号機)が、今年度中にイプシロンロケット4号機で打ち上げられる予定となっている。