エンタープライズソフトウェアプロバイダーのインフォアジャパンの代表取締役社長に、2018年11月1日付けで就任した飯尾光國氏が、記者会見を行い、経営方針などについて説明した。
飯尾社長は、「ERPの会社からサービスを提供するSaaSのプロバイダーへと、ドラスティックに変化を遂げていきたい。3カ月半に渡ってユーザーを訪問したが、ユーザーからの期待が高まっており、社員のモチベーションも高い。短期間で変わることができる自信と手応えを感じている」と述べた。
また、具体的な取り組みとして、「ダイレクトセールスの強化、パートナーとのアライアンスの推進、6層の製品戦略と新製品投入を進める」との方針を打ち出した。
ダイレクトセールスの強化では、これまでのコマーシャル中心のビジネスに加えて、エンタープライズ領域にも積極的に進出。自動車、産業機械、食品・飲料、流通といった業種別にあわせたソリューションを提供。GT NexusおよびBirstといった今後の戦略製品に対する専任セールス体制を構築する。
飯尾社長は「業界および業種別にあわせた適材適所の戦略を打ち出す。戦略製品に対する専任セールス体制を敷くことが効率的な営業活動につながると判断した」と語った。
また、パートナーとのアライアンス推進では、パートナー専任組織として、Partner Development Teamを新設。トレーニングカリキュラムの充実、日本語による認定試験の開始などに取り組む。今後3年間で、新たに100人の認定技術者を育成する目標も打ち出した。
「Inforの最新テクノロジーを推進するために不可欠なのがパートナーとの連携。だが、パートナーに対して、不親切な対応をしていたところもあり、反省するところがある。ローカライゼーションを強化し、日本のパートナーとの協業を厚くしていく。社長就任以来、パートナー各社を訪問して、新たな関係を構築しているところである」とした。
6層の製品戦略と新製品投入では、すべてのインフォアアプリケーションの連携基盤として、Infor OSを位置づけるほか、2019年度の重点ソリューションに置くグローバル物流の可視化ソリューションであるコマース・クラウド・プラットフォーム「GT Nexus」と、昨年買収したクラウド型BIの「Birst」を、2019年早々には国内投入。また、AIの「Coleman」についても、2019年春に予定されている米国での正式リリース後に、日本への投入時期を検討するという。
インフォアでは、Colemanによる「AI」、クラウド上でのデータ蓄積とBIによるBirstで分析を行う「Analytics」、IoTやeコマースなどのビジネスネットワークを構築するGT Nexusによる「Network」、Industry CloudSuiteによる「Cloud」、業種ごとに用意されたERPなどによって構成される「Industry」、Infor OSによる「Platform」の6層に対する製品戦略を打ち出している。
CloudSuiteは、2013年から、従来から提供していたオンプレミスのERPシステムをクラウドに移行。2015年にはシングルテナントのサービスを開始し、2018年にはマルチクラウドサービスを提供している。
インフォアジャパン ソリューションコンサルティング本部の石田雅久本部長は、「これまでは、5層の製品戦略を打ち出していたが、新たにPlatformを切り出して、Infor OSを、アプリケーション、従業員、プロセス、情報を連携する基盤に重視していることを明確に打ち出した。ERPやサプライチェーンだけでなく、他のシステムとシームレスに連携し、従業員がひとつのブラットフォームの上でシステムを利用できる点が特徴。これをクラウドで提供していくのが、重点的な取り組みになる」とし、「GT Nexusでは、CloudSuiteと連携する形で強化。物理情報とERPと接続して管理ができるのが特徴になる。また、Birstは、データソースからデータの抽出およびデータ準備、レポート設計、可視化に至るまでのプロセスを1システムでカバーするBIツールになる。さらに、Colemanには、PaaSの機能を追加して、より高度なAIを実現することになる。音声によるアドバイス、AIによる判断の増強、蓄積された情報を管理する自動化の機能を持っており、RPAとしての活用強化や、機会学習や深層学習による機能強化を進め、ERPとつながる形でサービスを提供する」とした。
また、飯尾社長は、「インフォアは、ERPの会社というイメージが強いが、今後は、サービスカンパニーとして活動を展開する。ERPを個別に販売するのでなく、Infor OSを基盤にして、ソリューションを提供する。インフォアの強みは、新たに買収した会社のソリューションの取り入れ方やつなぎ方が抜群にうまいところにある。短期間にインテグレートした形でソリューションを提供できる。日本の顧客の声をタイムリーに本社にあげて、日本の顧客に最適なものを提供する環境を作り上げたい」とした。
インフォアは、全世界108カ国に6万8000社以上の顧客を持ち、そのうち、8881社、7700万人のユーザーがクラウドを利用。7200以上の製品機能をクラウドで提供している。2018年にはSaaSの売上高が36%増となり、8ペタバイト以上のデータが利用されているという。日本でもクラウドビジネスは2桁増になっている。
飯尾社長は、日本ヒューレット・パッカードや、レノボ・ジャパン、EMCジャパンなどを経て、日本オラクルの常務執行役員システム事業統括や、日本テラデータの執行役員 産業・サービス事業本部 事業本部長を歴任。20年以上に渡るIT業界での経験がある。また、米国コロラド州のメサ・ステート・カレッジで経営ファイナンスの学士号を取得している。8月1日から、インフォアに入社しており、3カ月間に渡って、米本社などで研修を受けて、社長に就任した。
なお、前任の三浦信哉氏は、11月1日付けで、副社長執行役員 営業本部長に就任し、営業チームを統括している。