仁科記念財団(小林誠理事長)はこのほど、原子物理学とその応用分野での優れた業績をたたえる2018年度の仁科記念賞を、ドイツのマックス・プランク重力物理学研究所の柴田大ディレクター(兼務・京都大学基礎物理学研究所教授)(52)と、京都大学大学院理学研究科の田中耕一郎教授(55)の2人に授与することを決めた。授賞式は12月6日東京都内で行われ、受賞者に賞状、賞牌と副賞が贈られる。

  • 柴田大 氏

  • 田中耕一郎 氏(いずれも仁科記念財団提供)

柴田氏の授賞理由は「数値相対論による連星中性子星合体の研究」。重力波は、重い天体が動いたとき、周囲の時空にゆがみが生じ、それが光の速さで「さざ波」のように宇宙空間に伝わる現象で、昨年8月に米欧のチームが連星中性子星から重力波を検出した。柴田氏は、超高密度の2つの中性子星が互いに引力を及ぼす連星中性子星の合体のシミュレーションを1999年に世界で初めて成功し、その後この合体の現象に伴う重力波や電磁波の挙動に対する理論予想を進めた。

田中氏は「固体におけるテラヘルツ極端非線形光学の開拓」が授賞理由。テラヘルツ光は電波と光の間の周波数領域にある。田中氏はこのテラヘルツ光が高強度に発生する光源を開発。この成果が契機となって「極端非線形光学」と呼ばれる研究の発展に貢献した。

仁科記念賞は、原子物理学者の故仁科芳雄博士(1890~1951年)の功績を記念して1955年創設された。これまでの受賞者からは、江崎玲於奈、小柴昌俊、小林誠、益川敏英、中村修二、梶田隆章の6氏のノーベル物理学賞受賞者を輩出している。

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