凸版印刷は13日、フェルメール「牛乳を注ぐ女」を360度鑑賞できるシステムを東京都文京区の印刷博物館で期間限定(2018年11月13日~2019年3月31日)で特別公開したことを発表した。
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)の名画「牛乳を注ぐ女」を360度鑑賞できるシステム「ViewPaint フェルメール」は、同社のデジタルアーカイブデータ表現手法で再現した独自VR技術活用の絵画鑑賞システム。目白大学の小林頼子教授監修のもと博物資料や研究資料、絵画図法の読み解きやCGシミュレーションを用いて「牛乳を注ぐ女」の3次元空間を構築、コントローラーであたかも絵画に入り込んだかのような操作を可能とする。
16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで花開いたオランダ黄金時代の画家ヨハネス・フェルメールの絵画はまるで写真や映像のような写実的なタッチで柔らかい光と背景の陰影も特徴的だが、その手法も興味深い。鋲が打たれた痕があるという原画、天然鉱物を用いたウルトラマリンブルー、作品によっては、ピンホールカメラと同じ原理で当時普及していたカメラ・オブスクラを用いて下絵を作っていたのではないかと言われるほど。その精巧な手法は絵画の域を超えている。10月5日から上野の森美術展で開催されているフェルメール展には現存35点の作品のうち初来日を含む8点が展示されており、11月13日に来場者数が20万人を突破したことも報じられている。
凸版印刷が文京区の印刷博物館で再現しているのは、フェルメール展にも展示されている「牛乳を注ぐ女」の空間。装置の前の鑑賞者はコントローラーの操作で、実際の絵画には描かれていない角度や空間をフェルメールのタッチでリアルタイムにCG表示させる。同社は1997年から文化財のデジタルアーカイブの公開手法にVR技術を用いており、2007年には4K超高精細VRを開発。中国・故宮博物院、ホンジュラス共和国博物館にシアターを開設するなど国内外でVRシアターによる文化財公開の場を提供している。