サブスクリプション化で好調なPLM事業
PTCは11月13日、都内でプライベートカンファレンス「PTC Forum Japan 2018」を開催。併せてメディア向けに日本市場における概況などについて、PTC アジア・太平洋地域 統括責任者の桑原宏昭氏と、PTCジャパン 製品技術事業部 執行役員副社長の成田裕次氏が説明を行なった。
同社の日本における状況だが、2016年にサブスクリプションモデルを導入して以降、一度はビジネス的に落ち込みが生じたものの、2018年度(2018年9月期)はV字回復を達成。そのけん引役はPLMで、サブスクリプション化により、導入コストが下がったことで、主に中規模企業の採用が進んでいるという。「3D CADは他社で、PLMをPTCのWindchillとする顧客が多いが、中にはWindchillの導入を機に、CADも変更する、と言ってくれる顧客も居る」(桑原氏)とのことで、PLM以外の同社のビジネスにも好影響を及ぼしている模様だ。
そのため、同社の新規契約におけるサブスクリプション採用率は現時点で82%。2019年度にて100%を目指すとする。また、同社のIoT/ARソリューションを新たに導入する顧客の数は、前年比2倍の伸びを示しており、「デジタルデータをPLMで溜めて、IoT/ARで活用していくことを標ぼうしているPTCにとっては、この勢いでの増加は誇らしいこと」とする。
また、IoTの工場での活用、いわゆるIIoT分野での同社ソリューションの活用による解析と、ARデータがない場合においても、ビデオ通話を通じて、遠隔地にいる指揮者が映し出されている画面上にマーキングや指示を書き込むことで、サポートの精度を向上させることを可能とする「Vuforia Chalk」の工場での導入も伸びているという。
「IoTは大量のデータを集め、それを分析すれば、何かの洞察が得られるはず、と言われてきたが、闇雲に集めたデータからは何も得られない。ニッチな中でも、必要とするデータを集めないと意味がないことに気付いたことで、カスタマが現場に見せるデータも有意義なものになってきた」(成田氏)と、顧客のIoTで得られるデータに対する意識がこの数年で変化してきていることを指摘。各産業、工場ごとに案件が異なるため、手間がかかるが、ここを地道に行なって行かない限りは、IoTでの成功はないとする。
また、Vuforia Chalkだが、同社の当初の想定とは離れた使い方で現場での活用が進んでいるとのことだ。というのも、設備メーカーのサポートエンジニアが自社の設備を直しに行く際に活用するといった用途を同社では想定していたが、ふたを開けてみると、自社の設備については、何回か作業をしていれば、覚えてしまう、ということで、工場のスタッフが多種多様なメンテナンスを行なう際に、安心安全の作業を実現するために活用する、といった形での採用が進んでいるという。このため、「今後も、想定していなかった使い方がでてくるのでは?」とさらなる市場拡大に対しての期待を示していた。
市場の見直しでさらなる飛躍を狙うPTCジャパン
好調が続く日本法人のPTCジャパンだが、これからの動きについて桑原氏は、もう一度市場を見直そう、という動きを進めているとする。
既存顧客向けの既存事業は、いわゆる3D CADやPLMを販売していくというものであるが、そうした既存の顧客の周辺に居る新規顧客に向けて、リファレンスの状態で販売するという取り組みを進めているという。実際に、そうした形でのPLMの導入件数も増加しているとのことで、そうした市場での事業拡大を目指すとする。
また一方で、新たな分野への参入も模索することで、大幅な成長も目指すという。ただ、この場合はPTC一社のみでは困難との判断で、パートナーとの連携が重要との見方を示す。そのため、2019年春ころをめどに、パートナーとの協創、共生、成長と成功を目的としたエコシステムの構築を目指したスペシャルプログラムをアナウンスする計画であるという。