ネットワンパートナーズと米RealNetworksは11月6日、販売代理店契約を締結し、深層学習を採用した顔認証ソフトウェア「SAFR(セイファー)」を国内で販売開始した。
同製品は認証精度に加え、オープン性も高く、IPカメラやサーバなどのICT基盤を組み合わせることが可能で、そのほかのアプリケーションとの連携も容易だという。これにより、顔認証の利用シーンおよび規模に応じて、最適なシステム構成を可能としている。
具体的には、ネットワンパートナーズが同製品とIPネットワークカメラ、映像統合管理ソフトウェア、仮想化ソフトウェア、スケールアウト型ストレージ、サーバ、ネットワーク基盤と、オープンかつ大規模なマルチベンダーシステムで構成するフィジカルセキュリティソリューションを組み合わせてパートナー企業に提供し、同社のパートナー企業が開発する業種/用途に特化したアプリケーションと連携させる。
リアルネットワークス APAC副社長の高村徳明氏は、同製品について「データセットを購入し構築したわけではなく、RealplyaerやRealTimesで蓄積したユーザーデータを活用し、開発した。ほかのベンダーとの違いは、多様な生活シーンにおける顔のデータを自前で持ち合わせていることが強みであり、大きな特徴は認証精度が高いことだ」と、強調する。
同製品の認証精度は、米マサチューセッツ大学の公開顔画像データセット「LFW」を用いた性能評価において認証制度99.8%を達成し、米国国立標準化研究所(NIST)で実施された「Face Recognition Vender Test(FRVT) 1:1」のFace in the Wildテスト(実環境下における顔画像データセットを用いたテスト)では0.048と正確なアルゴリズムを有すると評価されているという。
これにより、サングラス装着時や、人種の違い、顔が下向きになっていても、本人の顔を認証することが可能となっている。
また、マルチベンダー製品に対し、さまざまなカメラやICT基盤を自由に選択することを可能とし、クライアントOSはWindows/mac OS/iOS/Linuxに対応し、小規模から大規模まで幅広いシステムで活用できることに加え、SDK/APIを利用することで連携アプリケーションを開発することが可能。
さらに、すべての顔情報を暗号化し、保護するほか、写真を利用した不正を防ぐために顔の表情(ex.笑顔など)を加えて二次認証もできる。顔情報を保管するデータベースはクラウド型とオンプレミス型から選択でき、オンプレミス型を採用した場合、組織外に顔情報を保管しないためセキュリティを保つことが可能だという。
SAFRのアーキテクチャはカメラで写真・動画を撮影し、顔の情報を切り出すソフトウェア「Virgo」(Linux、mac OS、Windows、管理コンソール機能なし)と、「SAFR Application」(mac OS、iOS、Windows、管理コンソール機能あり、Andoroidは近日リリース予定)でビデオプリプロセッシングを行い、顔を検知。
その後、REST APIを用いて顔認識エンジン、顔認証DB、イベントDBなどを含む「SAFRサーバ」に送信し、顔認証すればREST APIでJavaのスクリプトを組み、ソフトウェアの「SAFR Actions」でアクチュエータの起動をかけることを可能としてるほか、不審者検出やキオスク端末などの顔認証APIアプリケーションや、CRM、セキュリティシステムといった外部システムと連携できる。基本的にAPIは公開しているため、どのようなシステムでも容易に構築できるという。
米RealNetworks PresidentのMassimiliano Pellegrini氏は「北米では学校の安全を確保するために無償で提供している。今後のGo To Market戦略はネットワンパートナーズなどSIやカメラベンダー、映像統合管理ソフトウェアベンダーとの提携を通じたアライアンスにより、エンドツーエンドのソリューションを提供していくことを検討している」と、述べていた。
ユースケースとしては、IDカードの代わりに顔認証を用いてドアの自動開閉を行うなど、多岐にわたるシーンを想定しており、ホテルや店舗などの商業施設向けには笑顔やARタグと組み合わせた多要素認証による入退出管理なども提供でき、VIPやゲストを不特定多数から識別できる効率性も兼ね備え、サービスの向上にも貢献するとしている。
また、性別/年齢/感情を推定する機能を持ち、購買層情報の収集や属性に合わせたリアルタイムプロモーションなどのマーケティングにも活用できるという。
ネットワンパートナーズ 社長執行役員の田中拓也氏は「昨今では、フィジカルセキュリティソリューションの用途がこれまでの防犯用途に加え、マーケティングや業務改善など業務用途の新規需要が発生している。国内の監視カメラベンダーは自前のソフト、インフラ、運用となっており、オープン性に欠けるところがあるため、顧客の選択肢の幅が狭まるとともにコスト高になってしまうことから、SAFRを採用し、これからの展開を楽しみにしている」と、期待を寄せていた。
これまでの防犯用途の需要拡大に加え、マーケティングや業務改善など業務用途の新規需要が発生しており、顔認証の技術要素が新たに必要となっていたという。今後、同製品の拡販に向けて顔認証システムに必要なインフラを一貫して提供し、PoC(概念実証)やAPI連携・開発支援、技術・営業トレーニングなどを支援していく方針だ。
提供形態はサブスクリプションと買い取りの2種類を用意。価格は税別でサブスクリプションの場合、カメラあたり月額2万3600円、初年度に50社への導入を計画している。