今年になって、海に漂うマイクロプラスチックの話題が急に増えた。マイクロプラスチックは、大きさが5ミリメートルより小さいプラスチックのごみだ。もとから小さい場合もあれば、砕けて小さくなったものもある。海岸にポリタンク、発泡スチロールなどのプラスチックごみが大量に打ち上げられているという話は昔からあるが、近年、マイクロプラスチックについての調査や研究が進み、さらに主要国の首脳会議で取り上げられたこともあり、ここにきて一気に世界的な社会問題になった感じだ。
マイクロプラスチックの話は海を対象にしたものが多い。だが、忘れてはいけないのが川だ。河原を掃除する催しでは、たくさんのペットボトルやレジ袋が集まる。それらが、大雨のときなどに流されて海に出る。これらが海で小さく砕けてマイクロプラスチックになる。もちろんそうしたマイクロプラスチックもあると考えられているが、それ以前の川の段階で、すでに相当数のマイクロプラスチックが流れていることが、東京理科大学の片岡智哉(かたおか ともや)助教らの全国調査で初めて確認された。
片岡さんらは2015年8月から2018年5月にかけて、北海道から沖縄県まで日本全国の29河川36地点でマイクロプラスチックの調査を行った。プランクトンを採取するためのネットを川面に下ろし、1立方メートルの水に含まれるマイクロプラスチックの個数を調べた。
その結果、26河川31地点でマイクロプラスチックが見つかり、全体の平均個数は川の水1立方メートルあたり1.6個だった。日本近海のマイクロプラスチックは海の水1立方メートルあたり3.7個という報告が過去にあり、それに比べると少なかったが、今回の調査では場所や季節により個数に大きな幅があった。もっとも多かったのは千葉県の手賀沼に注ぐ大堀川の平均12個。片岡さんによると、多いときには50個にもなったという。
マイクロプラスチックは関東などの都市部を流れる河川で多かった。これらの川は、たとえば汚れを分解するために必要な酸素量を示す「生物化学的酸素要求量(BOD)」の値も高く、汚れたきたない河川ほどマイクロプラスチックの量も多いことが確認された。
また、交通量の多い道路の近くに植えてある街路樹の根元の土を調べたところ、小さく砕けた多数のマイクロプラスチックが見つかった。片岡さんによると、これらが雨水とともに側溝に流れこみ、そのまま川や海に出ていく可能性もあるという。
これまで日本は、プラスチックごみを「資源」としてアジアの国々に輸出してきた。しかし、中国は2017年に輸入を規制する方針を発表し、タイもそれに続いている。プラスチックごみは、行き場を失いつつある。10年後、片岡さんらの調査をはるかに上回る数のマイクロプラスチックがあちこちの河川で確認された――。そんなことにならないよう、社会の意識を変える早めの対策が必要だろう。