World Robot Summit 2018(WRS 2018)の展示会場において、産業技術総合研究所(産総研)は新型のヒューマノイドロボット「HRP-5P」を展示していた。HRPシリーズの新型ロボットは、2010年に発表された「HRP-4」以来8年ぶり。人間の重労働作業や危険な環境での作業を代替することを目指しており、「シリーズ最高の身体能力を持つ」という。
HRP-5Pの身長は182cm、体重は101kg。高出力モーターを採用するなどして、2015年のDARPA Robotics Challenge(DRC)に出場した「HRP-2改」に比べ、関節トルクと速度は平均で約2倍に向上した。自由度も、首2、腰3、腕8×2、脚6×2、ハンド2×2の合計37に増えており、より人間に近い動作が可能となっている。
HRP-5Pが目指すのは、大型構造物の組立現場での実用化である。自動車の製造工場などでは、産業用ロボットによる自動化が進んでいるが、建築現場、航空機や船舶の組立現場などは、人間による作業も多い。等身大のヒューマノイドであれば、既存設備のまま、人間に代わって内部に入り、作業できるメリットがある。
まだこの1体しかないとのことで、残念ながらブースで動作デモなどは無かったのだが、YouTubeにて、石膏ボードを運んで壁に固定する作業の動画が公開されているので、参照して欲しい。約11kgもある本物の石膏ボードを両腕でハンドリングしている点は注目だ。
なお、型番に「P」が付いていることからも分かるように、HRP-5Pはプロトタイプという位置付け。これまでのHRPシリーズと同じように、今後、完成型の「HRP-5」を開発する計画だが、登場時期については未定とのことだ。
ブースで説明していた知能システム研究部門の金広文男ヒューマノイド研究グループ長は、「HRP-5Pがそのまますぐに現場に入れるとは思っていないが、そろそろ研究開発用だけでなく、実際に世の中で使えるものが視野に入ってきた」と述べる。WRSの本大会が開催される2020年あたりには、現場での実証実験も行いたいとのことだ。