サッポロビールは、食コミュニティ運営のスタートアップ企業であるキッチハイクと業務提携し、コミュニティ内のユーザー評価や市場性を踏まえて実際に商品化を行うための新サービス「HOPPIN’GARAGE」を10月22日よりスタートした。

このサービスは、一般消費者から募ったアイデアをもとに極小ロット(中ビン20本)でビールをつくり、キッチハイクの主催するイベントで試飲してもらい、その反応やSNSでの評価等を考慮して、実際に商品化するかどうか決めるもの。

同社は2018年の事業方針として、「消費の多様化や社会環境の変化をチャンスととらえ、多品種・小ロット設備を導入して、個性ある商品の開発・育成を強化」を挙げていた。 そのため、静岡県焼津市の静岡工場のミニブルワリーを増築している。

サッポロビール 取締役常務執行役員 林直樹氏は、今回の取り組みの背景を、「20年前であれば、ビールの新商品を出せば話題になり、キャンペーンである程度売り上げが取れた。現在は、メーカー主催のキャンペーンだけでは売り上げは稼げない。消費者の共感を得る、コミュニティを通じて広げる、たくさん『いいね』がもらえる、そういったことがないと情報が伝播しない。メーカーがマーケティングをやればやるほど、商品の角が取れて丸くなり、人の意見を聞けば聞くほど、すでにある売れている商品に近づいてしまう。であれば、まったく違う商品開発があってもいいのではないか」とメーカー主導の商品開発の欠点を指摘した。

  • サッポロビール 取締役常務執行役員 林直樹氏

HOPPIN' GARAGEでは、自分が飲みたいビールの企画アイデアをHOPPIN' GARAGEサイト上で応募する。審査を経てアイデアが採用されると、ブリュワーとの開発ミーティングを実施。約2カ月後、特別なビールが完成する。実際に製造するのは、月に1つのアイデア。また、HOPPIN' GARAGEコミュニティ上でイベントを立ち上げ参加したりできる。そして、イベントでの試飲の感想やSNSでの反応を見ながら実際に販売するかどうか決定し、商品化されると、サッポロビールのネットショッップで購入できる。

  • HOPPIN' GARAGEの仕組み

商品化された場合のロット数は未定だが、現状では、350ml缶で800~900ケースが最小ロットだという。

林氏は今回の取り組みについて、「こういうのがあったらいいねというものを、そのまま商品にしてしまう。実際つくってみて、反応を聞きながら、そこから商品開発を始める。こういうのを一回やってみたいと思った。成功するかどうかはこれからだが、コミュニティの運営ノウハウをもつキッチハイクさんとコラボしながら行うことで、新商品をよりユーザーニーズに近いところでつくりやすくなる。今回の取り組みで利益をあげようとは思っていない。ただ、経験は非常に貴重なものになる」と語った。

  • HOPPIN' GARAGEが提供する価値