NTTドコモの中期戦略2020「beyond宣言」により生まれた新しいワークスタイル改革「TOPGUN」。これは、同社の顧客、研究開発部門、法人営業部門がチームを結成し課題を解決していきながら、新しいサービスを創出するという実証プロジェクト。「日経xTECH EXPO 2018」(10月17日から19日)にその成果のいくつかを展示した。NTTドコモが推進するこのプロジェクトの成果についてレポートする。

  • NTTドコモ トップガンブース

    NTTドコモ トップガンブース

NTTドコモが推進するプロジェクト「トップガン」。その名は、有名な映画にちなんで名づけられたという。そこには、少数精鋭チームによる新しい価値の創出という意味が込められている。「顧客」と「研究開発」、「法人営業部門」が三位一体となってチームを結成し、顧客より提案された課題の解決を目指していくものだ。そして、その間に生まれたソリューションが新しいサービスとなっていく。現在、トップガンの活動はWebサイトにも掲載されており、詳細な活動はそちらで確認できる。

トップガンチームは現在、11のプロジェクトを推進しており、その中から今回、TECH EXPO 2018に「Location Net」、「画像認識エンジン」、「プログラミング教育用ロボット」、「タッチで英会話」、「おしゃべり案内板」、「トップガン×ドコモ5Gオープンクラウド」の5点が展示されていた。中でも「おしゃべり案内板」は今回初展示となるそうだ。それでは、個々の内容について見ていきたい。

「Location Net」は、同社の近距離無線技術BLE(Bluetooth Low Energy)を搭載したタグを人やモノに装着して位置把握するサービス。近距離無線技術BLEを活用することでGPS電波が入りにくい、屋内、地下などでも正確な所在特定が可能になる。サービス導入の際にも業界毎に最適化されたパッケージを事前に組成しているので、スピーディな導入が可能になっている。この技術はすでに活用されており、羽田空港では貸し出されたベビーカーや車椅子の回収、神戸市では小学生の現在位置を連絡する見守りサービスなど活用されている。 現在、「Location Net」は、「Location Net -あんしん見守り- 」、「Location Net -どこでも検知- 」としてサービス化されている。

  • 「Location Net」で使用される専用タグ。小電力設計で電池が平均で半年もつ(向かって左)。「Location Net」で使用される検知器(向かって右)
  • 「Location Net」で使用される専用タグ。小電力設計で電池が平均で半年もつ(向かって左)。「Location Net」で使用される検知器(向かって右)
  • 「Location Net」で使用される専用タグ。小電力設計で電池が平均で半年もつ(向かって左)。「Location Net」で使用される検知器(向かって右)

「画像認識エンジン」は、AIを使った画像認識システムを様々な環境で活用するプロジェクトだ。同社では、「特定物体認識」、「一般物体認識」、「物体検出」、「類似画像検索」の四つの画像認識エンジンを開発しており、それらを組み合わせて新たなサービスを展開している。今回、ブースに展示されたサービスは、商品の陳列棚を撮影した画像の中からAIを使って製品名、個数、配置などの情報を正確に抜き出す技術。この技術を使ったマークティングサービスは、サイバーリンクスと協業で「棚SCAN-AI」として一般に提供が開始されている。また、インバウンド業界向けにムスリムやベジタリアンが購入可能な食品がアプリ上でわかる「食品判定システム」としても活用されている。

  • タブレットで商品棚を撮影。撮影後すぐにAIが画像を読み込み、商品を画像認識で分別し特定(向かって左)。タブレットで撮影した製品を画像認識で特定。特定したデータをクリックするとハラールに適合した食品である情報が表示される(向かって右)
  • タブレットで商品棚を撮影。撮影後すぐにAIが画像を読み込み、商品を画像認識で分別し特定(向かって左)。タブレットで撮影した製品を画像認識で特定。特定したデータをクリックするとハラールに適合した食品である情報が表示される(向かって右)
  • タブレットで商品棚を撮影。撮影後すぐにAIが画像を読み込み、商品を画像認識で分別し特定(向かって左)。タブレットで撮影した製品を画像認識で特定。特定したデータをクリックするとハラールに適合した食品である情報が表示される(向かって右)

今回のブースで特に目を引いていたのが、プログラミング教育用ダンボールロボット「embot」だ。同製品は、2020年から開始される小学校でのプログラミング教育必須化に合わせて開発された学習キット。「embot」は、段ボールと基板一体型ケース、モーター、LEDライト、ブザーなどの部品で構成されており、小学生でも簡単にオリジナルのロボットを作成できる。ロボットのプログラミングは専用アプリを使って行う。プログラムは、ビジュアルを活用し、直観的にプログラミングの概念や基礎を学習できるようになっている。

ロボットの素材がダンボールのため簡単に着色、カスタマイズができるので子供たちには大変好評。今回の展示会場でも直売され、多数の外国人にお土産として購入されたという。本体価格は4,800円、「embot」Webサイトから購入できる。

  • ダンボールロボット「embot」と「embot」<a href="https://www.embot.jp/" target="_blank">Webサイト</a>
  • ダンボールロボット「embot」と「embot」<a href="https://www.embot.jp/" target="_blank">Webサイト</a>
  • 「ダンボールロボット「embot」と「embot」Webサイト

  • タブレットを使って視覚的なプログラミングができる。プログラミングに従ってロボットが左右に手を振る
  • タブレットを使って視覚的なプログラミングができる。プログラミングに従ってロボットが左右に手を振る
  • タブレットを使って視覚的なプログラミングができる。プログラミングに従ってロボットが左右に手を振る

今回はじめて、外部に公開されるのがこの「おしゃべり案内板(仮称)」。こういったディスプレイを活用したAI型の受付サービスは、結構あるのだが同サービスが活用するAIエージェントは、話題のCGクリエイター「TELYUKA」(テルユカ)」が作成して話題を呼んだフルCGの女子高生キャラクター「Saya」を採用している点だ。

案内板の機能に加えて音声対応も可能。残念ながら展示会では「Saya」の音声が決まっていないのでおしゃべりするところを聞くことはできなかった。キャラクターには「Saya」以外からも何点か選択することができる。

  • 「おしゃべり案内板(仮称)」フルCGの女子高生キャラクター「Saya」
  • 「おしゃべり案内板(仮称)」フルCGの女子高生キャラクター「Saya」
  • 「おしゃべり案内板(仮称)」フルCGの女子高生キャラクター「Saya」

これ以外にもすぐわかる定型文やイラストをタッチすることで簡易なコミュニケーションができる「タッチで会話」と今話題の5G環境を提供する「ドコモオープンクラウド」トップガンが融合した『「トップガン」×「ドコモ5Gオープンクラウド」』の展示があった。

  • 「タッチで会話」。現在の翻訳アプリの音声認識は雑音や混声でエラーが多い。タブレットを使ったやり方が未だに着実だという(向かって左)。「トップガン」×「ドコモ5Gオープンクラウド」。現在の成果として、ドコモ5Gオープンクラウドで動く「ひかりサイネージ」を展示(向かって右)
  • 「タッチで会話」。現在の翻訳アプリの音声認識は雑音や混声でエラーが多い。タブレットを使ったやり方が未だに着実だという(向かって左)。「トップガン」×「ドコモ5Gオープンクラウド」。現在の成果として、ドコモ5Gオープンクラウドで動く「ひかりサイネージ」を展示(向かって右)
  • 「タッチで会話」。現在の翻訳アプリの音声認識は雑音や混声でエラーが多い。タブレットを使ったやり方が未だに着実だという(向かって左)。「トップガン」×「ドコモ5Gオープンクラウド」。現在の成果として、ドコモ5Gオープンクラウドで動く「ひかりサイネージ」を展示(向かって右)

このように様々なソリューションの開発とサービス創出を実証する「トップガン」プロジェクト。このプロジェクトについては、研究者たちの間でも好評であり、特に若手のモチベーションが非常にあがったのだという。プロジェクトは、技術者だけではなく、営業担当者が主導して行われることも多く、現場はかなり活性化しているそうだ。担当者によれば今後、現在リストアップされている企画の新陳代謝をすすめていき、さらなる価値あるサービスの創造を目指したいとのこと。