富士通研究所は10月19日、データセンターの空調設備の電力を削減する空調制御技術を開発したことを発表した。

  • 外気導入制御技術

    外気導入制御技術

データセンターなどの大規模コンピューティングシステムでは、AI処理に特化した高発熱デバイスを搭載することによる高性能化が進んでいるが、それによりデータセンターが使用する電力量が激増しており、電力コストだけでなく地球環境への影響も深刻となっている。

この課題に対し、データセンターの空調機の消費電力を削減するために、自然エネルギーである外気を利用する外気導入式空調機が普及している。外気温度が室内温度より低いときに外気を導入することで、低消費電力での温度管理が可能となるが、空調機には湿度管理の要件もあり、必ずしも最適な制御ができていなかった。

そこで富士通研究所は、空調機電力をより最小化する外気導入制御と、発熱エリアを特定し効率よく冷却するアルゴリズムを開発した。データセンターにおける温度変化の高精度予測技術と組み合わせることで、たとえば1時間先の状況を予測し、逐次電力が最小となるよう効果的に動作させることが可能だという。

室内の空調機近辺や屋外に温湿度を測定するセンサーを設置し、空調機の設定値に対して、内気循環時および外気導入時の冷却・除湿に要する消費電力を計算する。その上で、消費電力が最も小さくなるように内気循環と外気導入の比率を制御可能で、温度および湿度を低消費電力で適切に管理できる。また、サーバの発熱変動に追従し、空調機電力を最小化する制御アルゴリズムにより、最低限の消費電力での温度管理が可能となる。

設定温度を変更した際に、過去の室内温度分布の変化を分析し、空調機ごとの各エリアへの影響の大きさを算出します。あるエリアのサーバ温度が上がった時に、サーバが設置されているエリアへの影響が大きい空調機の設定温度を制御することで、最低限の消費電力での温度管理が可能となります。

  • 吹出冷気制御技術

    吹出冷気制御技術

同社によれば、この空調制御技術を300ラック規模の実稼働している社内データセンターにてトライアルを行ったところ、これまでの運用条件と比較して29%の空調電力削減を実現したという。このデータをもとに年間のサーバ電力量7,000万kWh、空調電力量2,200万kWhとなる1,000ラック規模のデータセンターの条件で試算すると、年間640万kWhの省電力化が見込まれるということだ。

これにより、今後電力使用量の増大が見込まれるデータセンターの省電力化を実現し、地球環境の温暖化防止に貢献できるとしている。同社では、開発した空調制御技術を、富士通が運営するデータセンターへ2019年度から順次導入していくとともに、同意技術を一体として設計された低電力かつ効果的な空調管理が行えるコンピューティングシステムへと展開していく予定だとしている。