太陽に最も近い惑星の水星はまだ多くの謎に包まれている。強い太陽光や灼熱(しゃくねつ)の環境といった障害が多く探査が難しいためだ。米国の探査機によるこれまでの2回の挑戦に続いて、日本初の探査機が欧州の探査機と一緒に南米フランス領ギアナから20日にも打ち上げられる。構想開始から21年。水星の謎解明を目指して到着まで7年の宇宙の長旅が始まる。

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    画像 打ち上げ後に合体して水星に向かう「みお」とESAの「MPO」の想像図(提供ESA)

「みお」は高さ2.4メートル、直径1.8メートルの円に内接する八角柱型で、全重量は約280キロ。計画によると、打ち上げ後、「みお」とESAの「MPO」は合体したまま地球や金星、水星の回りでスイングバイを繰り返し、2025年末に水星周回軌道に到達する。到達後2つの探査機は分離して異なった軌道を回りながら約1年間探査を続ける。

水星は太陽系の中では、太陽に最も近く、月よりは大きい程度の最も小さい惑星で。公転周期は約88日。半径約2440キロ。岩石質の地球型惑星で磁場を持つことが分かっている。月表面に似たクレーターがあるが、昼の表面温度は約430度、夜は氷点下約170度になるとされ、寒暖差が大きい過酷な環境も知られている。水星の存在は紀元前から人類に知られていたが、探査は難しいとされてきた。その理由は探査機が強烈な太陽光や太陽風にさらされるために機体の熱対策が必須で、水星への軌道投入には高い推力が求められるためという。「みお」は、光をはね返すガラス製の鏡で覆われ、鏡と搭載機器類の間に断熱材を張り巡らす独自の設計が採用された。

これまでの探査は米航空宇宙局(NASA)の「マリナー10号(探査期間1974~75年)」と「メッセンジャー」(同2011~15年)による2回だけ。「マリナー10号」が水星に磁場や磁気圏があることを、「メッセンジャー」が南北の極域に氷が存在することをそれぞれ見つけた。しかし内部に巨大な中心核があるとみられる特異な構造の由来など、詳しいことは分かっていない。

水星周回軌道到達後、主に「みお」は水星の磁場や磁気圏、大気などを調べる。「MPO」は表面や氷の存在を再確認する観測などを行う。日本で水星探査の構想が検討され始めたのは1997年。当初は日本単独の計画だったが、途中から欧州と共同の「BepiColombo(ベピコロンボ)計画」として進められた。米国以外で初の探査計画で、計画名は「マリナー10号」探査に貢献したイタリアの数学者にちなんで付けられた。

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    画像 水星に近づく「みお」の想像図 (JAXA提供)

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    写真 2015年に報道陣に公開された「みお」(JAXA提供)

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    写真 ギアナのクール-宇宙基地から打ち上げられるフランスのアリアン5型ロケットの遠景(2018年7月、JAXA提供、「BepiColombo水星探査計画プロジェクトページ・CGS便り」から)

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