ルネサス エレクトロニクスは10月17日、都内でプライベートカンファレンス「R-Carコンソーシアムフォーラム 2018」を開催。自動車分野における同社の最新の取り組みや、パートナー企業との協業の成果などの紹介などを行った。
環境の変化に合わせて自身の姿を変えるルネサス
同社執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部 CTOの吉岡真一氏は、自動車市場の変化について、「エコカー(E)、コネクテッドカー(C)、自動運転(A)、サービスカー(S)の4つのポイント(CASE)に基づいて変革が起きている」とし、同社の車載SoC「R-Car」も、そうした激しい動きに密接に関係しているとした。
そうした市場の変化を受けて、2005年に立ち上がったR-Carコンソーシアムも、提供するものの形や、パートナーの中身の変化が進んできたとし、「ネットワーク接続により、クラウドとの連携もする必要がでるなど進化が求められてきた。そうした中、プラットフォームも、半導体製品だけでなく、その上で動く基幹ソフトウェアを提供することで、システムの開発を容易化する必要があり、それを実現するのが現在のR-Carコンソーシアムのミッション」(同)と、その変化の内容を説明する。
ルネサス自身も2017年に「Renesas autonomy」という自動運転時代に向けたコンセプトを発表。その概念に基づく製品開発を進めることで、自動運転時代に求められるクラウドサービスからセンシング、車両制御までのエンドツーエンドのソリューションを密結合させ、ワンストップなトータルソリューションの実現を目指してきた。
加盟企業250社を超すコンソーシアムに成長
また、自動車分野への注目が高まるにつて、R-Carコンソーシアムに参加する企業数も増加。2018年には33社が新たに加盟。2018年10月時点で251社が参加しているという。その参加傾向としては、クラウド連携により、さまざまなサービスを自動車で活用することができるようになってきたことから、この数年、システムインテグレータや、サービサーといったメーカーの加盟が増えてきたという。
一方で、加盟企業が増えるにつれ、各企業が提供できるサービスが多岐にわたってくることとなり、どの企業が、どういった特徴を有しているのか、といったことを全体俯瞰で見ることが難しくなってきたこと、ならびに自動車のエレクトロニクス化(電動化)の進展により、案件が増加しており、どこで何が行なわれているかが見通しづらくなってきたことをルネサスでは感じているとのことで、「OEM(自動車)メーカーやティア1メーカーが、実現したいニーズに応じて、個々のパートナー企業に声をかけて行くのではなく、やりたいことを実現できる用途別のグループを作って、それを見える化することで、そこに話を持っていけば、やりたいこととマッチした技術を有している企業とワンストップで協業ができるようなワーキンググループの立ち上げをコンソーシアムとして目指す」と、提供できるソリューションをメニュー化していくことを考えているとした。
また、「R-Carコンソーシアムとしては今後、オープンプラットフォームとして、ルネサスが価値を提供できる領域のほかに、パートナーが提供するアプリケーション領域を設けることが差別化につながる」ともし、それを実現するための開発環境の整備をこの1年かけて進めてきたことを強調。今後も、R-Carの新製品と並行して、さまざまな開発環境の拡充を進めていくとするほか、「エコシステムが継続していくためには、パートナーが満遍なくビジネスを遂行できることが重要であり、そのための可視化がワーキンググループによるメニュー化であり、顧客はそのメニューの中から、欲しいものを選んで、必要であればそこからカスタマイズしてもらう」というコンセプトが、そうした考えを実現できる手段となるとした。
なお、同社では、今後、さらに自動車の価値はソフトウェアに移行していくと、サーバとクライアントのような関係性をクラウドと自動車にも求められるようになってくるとの予測のもと、「中央集約のサーバ型になると、そこで必要とされる高い処理を実現できるSoCを提供できるところが有利になるという見方もあるが、自動車はリアルタイムで100個以上のECUが連動する必要があるなど、単純に高性能SoCがあれば良い、というだけでは決まらない世界。処理をクラウドにオフロードさせるにしても、堅牢性やセキュリティの問題もあるし、リソースの変動に対応する必要もある。そういった意味では、アプリケーションとハードウェアの境界面をどのように定義するかが重要で、そこを意識しつつアプリベンダたちがハードウェアの性能をどこまで引き出せるかを意識していく」と、単に高性能なハードウェアを開発するだけでは意味がないとし、これからも半導体を活用してくれるアプリケーションレイヤのカスタマの開発が楽になっていけるようなソリューションの実現に資源を集中させていくとしている。