ルネサス エレクトロニクスは10月16日、Amazon Web Service(AWS)が提供するクラウドサービスと、エッジとなる車両のデータを連携させたサービスの開発を可能とする「コネクテッドカー用ソフトウェア開発ツール(SDK)」を発表した。

同SDKは、同社の自動車向けSoC「R-Car」に対応し、走行状況やドライバの状態など、車両側のデータと、工事や渋滞といった道路状況、天候、地図といったクラウド側のデータをリアルタイムに組み合わせて、さまざまなサービスを容易に開発することを可能としたもの。具体的には、アクセルやブレーキ、ハンドル角度など車両データを使用できるシミュレータと、車両データを管理するエッジコントローラ、ドライバモニタリングなどのアプリケーションと連携するVehicle API、そしてクラウドと接続するインタフェースといったもので構成されている。

  • コネクテッドカー用SDK
  • コネクテッドカー用SDK
  • コネクテッドカー用SDKの概要 (資料提供:ルネサス)

ツールとしては、R-Carへのデプロイツールを含む評価版と商用版が用意されており、評価版はR-Carコンソーシアムの会員向けに先行して12月より提供を開始するほか、2019年第1四半期に一般に向けた提供を開始する予定としている。評価版は無償で提供されるもので、データの種類や細かさ(サンプリングレート)に制限を設けているものの、別売りのR-Carスタータキット上でアプリケーションを動作させ、実際にクラウドに接続して試用することが可能で、車両データに加え、クラウド側で提供する新たなAPIおよそ100種類を実装してシミュレーションすることができるものとなっているという。

  • コネクテッドカー用SDKのデモ
  • コネクテッドカー用SDKのデモ
  • コネクテッドカー用SDKのデモ
  • コネクテッドカー用SDKのデモ
  • R-Carコンソーシアムフォーラム 2018の会場にて行なわれていたコネクテッドカー用SDKのデモ。車体自体は、昨年のR-Carコンソーシアムフォーラム 2017でも使われていたものを流用したが、ソフトウェア側がクラウド連携したものへとアップグレードされた。これにより、例えばクラウド上の地図データと連携しただけでなく、どこで通常とは異なるアクション(急ブレーキなど)を行なったか、といったログなども簡単に残せるようになった(信号無視などは、車内のインパネにもその旨が通知される)

一方の商用版は、実用化に向けてカスタマイズや最適化、機能安全対応を行えるバージョンで、R-Carコンソーシアムのパートナ企業(2018年10月時点で251社)からのサポートも受けられるものとなっているという。

  • コネクテッドカー用SDKのデモ

    コネクテッドカー用SDKのコンポーネントをばらした状態のもの。シミュレータも搭載してるので、人間が走行させなくても、自動ループによる学習を行なわせることも可能とのこと

なお、同社のオートモーティブソリューション事業本部 テクニカルカスタマーエンゲージメント統括部 シニアダイレクターである吉田正康氏によると、「今回はAWSとの連携であるが、特定のクラウドプラットフォーマに限定してサービスを提供していくつもりはない」とのこと。OEM(自動車)メーカーやティア1メーカーの考え方などもさまざまなため、どこのメーカーのものであっても、R-Car上でちゃんと動く環境を構築していくことが重要であり、今後も幅広く、対応を図っていく計画としていた。