米Maxim Integratedは10月10日(米国時間)、自動車向けのマトリクスマネージャ「MAX20092」を発表した。このMAX20092に関して事前に説明会が開催されたので、その内容をご紹介したい(Photo01)。

  • Kent Robinett氏

    Photo01:説明を行ったKent Robinett氏(VP, Business Manager, WW Automotive Sales & Marketing)。前回の説明会は2014年と「結構昔」だが、これとは別に頻繁に日本にも来られているそうだ

同社は重点部門として車載とヘルスケアを掲げていることもあり、さまざまな車載ソリューションを投入している(Photo02)。

  • セーフティの中に環境と自律走行

    Photo02:次のスライドとも絡むが、セーフティの中に環境と自律走行が入るのは、ちょっと不思議な感じだ

今回の製品は分類としてはセーフティに属する形になるが、同分野はADASに絡む自律走行が現在ホットな話題とされている一方で、それに負けず劣らず重要視されているのが環境負荷の低減である(Photo03)。

  • 環境負荷についてのメッセージ

    Photo03:環境負荷については"Breathing is more important than the price of oil"(呼吸することは石油の価格よりも大事なことです)というメッセージも示された。もっとも、では照明をHIDからLEDに変えただけで25000tのCO2が削減できるか、というとそれだけの問題ではないとは思うが

環境負荷の低減もいろいろ手法があるが、Maximが提案するのは照明のLED化である(Photo04)。もっともこれは別に今さら提案しなくてもすでに多数の車が照明のLED化を進めてはいるものの、高級車はともかく普及帯以下になると価格の壁がそびえ立つこととなる(Photo05)。

  • 自動車のLED化

    Photo04:逆に高級車はもうなんでもかんでもLED化が進んでいる感はある。これをどうやって普及帯以下の車に持ち込むか、が今後の課題である

  • 照明設計の課題

    Photo05:LEDそのものの値段はどうしようもないとしても、トータルとしてのBOMコストの削減は可能だし、効率を改善すればより少ないLEDで同等の機能が果たせる、あるいは設計の再利用による設計コストの低減とか、EMI低減によるテスト/対策コストの低減などもここには含まれる

もちろん根本的にはコンポーネントそのものの値段が違うため、Maximだけでどうこうできるわけではないのだが、とりあえず自社の範囲内でできる事は実現しよう、というのが基本的な姿勢である(Photo06)。

  • 「MAX20092」の特徴

    Photo06:オン抵抗が70mΩと低い事と、マルチストリング(1ストリング×12・2ストリング×6・4ストリング×3のいずれか)構成を取れるのが特徴

こうした中で開発されたMAX20092であるが、フロント/テールライト向けの大電流LEDを12個までコントロールできるマトリックスマネージャである。

LED制御は12bit PWMで、対数フェードイン/アウト機能を持つほか、オープン/ショート/オープントレースの各検出モードを持ち、最大56Vまでの電圧に対応できる。また最大27個のMAX20092を並列に接続し、324個までのLED制御も可能となっている。EMI対策に関しては、スルーレート制御により、EMIとノイズの低減が可能になっているとされる。これを利用したアプリケーションはPhoto07のような構造になる。

  • ブロック図

    Photo07:ちなみにMAX20092そのものは5mm×5mmのTQFNパッケージであり、MAX20096(こちらも5mm×5mmのTQFN)と合わせて照明に一体化させるのは容易である

制御はSPI経由になっているので、適当なMCUで集中管理も容易である。こちらと組み合わせるMAX20096MAX20097はすでに発表済であり、あわせてLED照明に最適な構成を最小のBOMコストと実装面積で実現できるとする(Photo08)。

  • MAX20096の概要

    Photo08:基本はMAX20096で、これを28pin TSSOPにすると共にSPIを省いたのがMAX20097となる

また評価キットとしてMAX20092EVSYS(Photo09)も用意され、開発用のGUIなども提供されるとする。

  • MAX20092の評価ボード

    Photo09:MAX20092はドーターボード上に実装される。左に繋がっている黒いボードはOSRAM Opto SemiconのOslon Compact PLを12個搭載している

MAX20092はすでに出荷を開始しており、価格は1000個発注時に1個あたり2.93ドルからとなっている。

なお説明会では他にサラウンドビュー向けカメラ電力供給用ソリューション(Photo10,11)や緊急通話向けの予備バッテリ管理ソリューション(Photo12)などの説明も行われた。同社は今後もこうしたさまざまな車載関連製品を増やしていくとの事であった。

  • 電源供給ソリューション

    Photo10:カメラとアナログ映像ケーブルで接続する場合の電源供給ソリューション

  • カメラモジュール電源

    Photo11:カメラの映像については説明はなかったが、おそらくはSD解像度と思われる。サラウンドビューとしてはこれで十分だろう。ADAS向けだと最近はFull HDとかいう話になっており、そうなると同軸ケーブルではそろそろ厳しくなってくる

  • MAX20095の概要

    Photo12:例えば事故とか故障などでメインバッテリーが利用できない場合でも緊急通話を可能にするために、バッテリーそのものも別系統で用意される。もっとも通話のみだから、容量は小さくても良いわけで、MAX20095はこうした目的のためのバッテリーコントローラである