デル(Dell EMC)とSAPジャパンは10月10日、国内の中堅企業向けのSAP ERP導入において、連携を強化すると発表した。デルは、SAP向けに検証済の基盤システムを新たに提供し、SAPビジネスに強みがあるパートナー3社を通して販売していく。
これらは、主にグローバル進出を実施済あるいは検討している企業やスクラッチで構築したシステムを利用している企業向けに販売していく。デルの分析によれば、これらターゲット企業は4360社程度あるという。
デル 広域営業統括本部 デジタルセールス&広域営業本部長の木村佳博氏は、こういった企業には、言語、通貨、会計基準への対応、スクラッチ開発による運用管理コストの増大、システムに拠点間で統一性がない、データの整合性がとれないといった課題があるという。
また木村氏は、「経営資源である膨大なデータを活用していくには、手組みのシステムでは難しい。パッケージソフトが向いている」と、SAPに注力する理由を語る。
両社は、こういった中堅企業に向け、グローバル対応のパッケージであるSAP ERPを提供していく。
デルでは今回、SAP導入促進に向け、オンプレミスとクラウドの2つの基盤パッケージを用意した。
オンプレミス向けには、ハイパーコンバージドシステム(HCI)パッケージを提供。そして、クラウド向けにプライベートパッケージ HA(無停止型冗長構成のプライベートクラウド向けシステム)を提供する。
これらは、アイ・ピー・エス、NTTデータグローバルソリューションズ、FutureOneという、SAP導入で実績があるパートナー3社を通して販売していく。これら3社は、SAPから紹介されたものだという。
アイ・ピー・エスは500名以下の製造業・商社をターゲットに自社のSAPテンプレートと合わせて提供。NTTデータグローバルソリューションズは、組立製造、製造販社向けに商社テンプレートと合わせて提供。そして、FutureOneは500名以上の企業を対象にSAP Business Oneを販売する。
デルでは販売促進に向け、SAPセミナーの開催、ユースケースや事例を紹介するWebプロモーションのほか、ターゲットDMを展開し、3年間で40社、売上規模35億円を目標に販売していく計画だ。
提携の背景にERPへの導入意欲
今回の提携強化の背景には、デルが今年の1月29日~2月2日にかけて行った「中堅企業のERP利用実態調査」がある。この調査は、従業員100名以上1000名未満の318社に対してアンケートで行ったものだ。
それによれば、製造業の77%でグローバル展開を実施・検討しており、さらに社長の平均年齢が下がり、経営者の77%がIT投資の意思決定に関与しているという。また、中堅企業の81%が働き方改革に着手しており、このうち92%でIT予算が増加しているという。
そして、SAP導入企業の72%がグローバルビジネスを視野に入れていることがわかったという。
デル 執行役員 広域営業統括本部長 清水博氏は、「中堅企業のグローバルの展開が加速している。また、働き方改革に取り組む企業が増え、経営層も変わり(世代交代し)、デジタル化に取り組みやすい環境になってきた。デルとSAPには、似たような手法、顧客セグメントがあり、連携することで相乗効果が出る。両社は中堅の国内外の競争力、経営基盤の強化に向け連携を強化していく」と、提携強化の意義を語った。
また、SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス事業担当 牛田勉氏は、「グローバルのSAP 新規顧客の85%が中堅企業であり、国内でも新規の中堅企業からの問い合わせが昨年比で倍増しており、SAPが中堅企業のみなさんから見直されている」と、SAP自身も中堅企業の市場性に期待を寄せた。