日本ヒューレット・パッカードとレッドハットは10月10日、共同で開発したITインフラ運用における自動化ソリューション「あんしん Ansible パック」の販売を開始した。
新ソリューションは、HPEのHCI基盤「HPE SimpliVity」とコンポーザブルインフラストラクチャ「HPE Synergy」に、レッドハットのIT自動化プラットフォーム「Red Hat Ansible Tower」を組み合わせたもの。
従来は自動化が難しく、手作業で初期設定から運用時の変更作業を行っていたサーバ、ストレージ、ネットワークなどのハードウェアやファームウェアの設定、管理をREST APIを通じて自動化し、数分での迅速なリソース追加や構成の変更を可能としており、リソースの柔軟な配備を実現するという。
日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 クラウドプラットフォーム統括本部 テクノロジーエバンジェリストの小川大地氏は「日本のIT自動化の現状は、IT担当者に依存し、ソフトウェアレイヤのみを管理することが多い」と指摘。
小川氏は、新ソリューションに関して「APIで密に連携することで、自動化の領域をソフトウェアのみならずサーバ、ストレージ、ネットワークなどのハードウェアに拡大し、これまでの担当者レベルから、そのほか部門など組織横断的に活用できる」と胸を張る。
また、これらを実現するために、Ansible Towerを事前セットアップ済みの状態で提供し、トレーニングとワークショップの開催、サンプルスクリプトを提供するという。
レッドハット プロダクト・ソリューション本部 シニアソリューションセールスマネージャーの池田俊彦氏はAnsible Towerについて「エージェントレスであり、自動化の手順がYAML形式で可読性がある。また、手作業によるミス、パスワードの流出などを防ぐための機能を有し、適切なポリシーによる自動化の管理を可能としている。さらに、AWS(Amazon Web Services)やAzureなど、そのほかのシステムと連携できるモジュールを備えている」と、説く。
実際、Ansible Towerの顧客数は年々増加しており、金融、公共、通信分野とデジタルトランスフォーメーション(DX)に敏感なユーザーが導入する傾向が強いという。さらに、日本における適用状況はインフラ管理者の負担軽減をはじめとした働き方改革や、既存システムとの連携に柔軟性を持つためDXで活用されており、導入数は前年度比2倍となり、DevOpsやIT運用効率化、ネットワークなどでの採用が目立つとの見解を示した。
そして「Ansible Towerは分かりづらい部分があり、活用法が分からないユーザーに対しては導入が容易なHCIが有効であることに加え、HCIに強みを持つHPEと組むことでAnsibleの浸透を加速させていきたいと考えている」と展望を述べていた。
HPE SynergyとAnsible Towerの組み合わせでは、ハードウェアの設定、OSのインストールからアプリケーションの展開までワンストップで自動化が可能となる。例えば、新規システム向けのサービスデプロイに数週間を要していたが1日以下に短縮されるとともに、予測可能なデプロイプロセスの自動化により、手作業に起因するエラー排除などの効果が報告されているという。
また、HPE SimpliVityとAnsible Towerの組み合わせではHPE SimpliVityが持つ、圧縮、重複排除技術を活かした仮想マシンの高速クローニング機能により、VDI環境の導入/管理作業を自動化するほか、高速化することが可能になるという。
一例として、従来VDI環境のクローニングや手動のOS設定などで1時間以上かかっていた月次メンテナンスを5分以下に短縮することを可能とすることに加え、VDIにおける人員配置の変更に伴う大規模なユーザーの追加作業や拠点間での入れ替え作業など、VDIの運用ライフサイクル全体の高度化と省力化を支援することができるとしている。
日本ヒューレット・パッカード 執行役員 ハイブリッドIT事業統括の五十嵐毅氏は「2020年には、エッジで生成されるデータの割合が70%を占めることが予想されており、データ中心としたDXが重要となる。一方、インフラ管理者はサービスインが遅いことやコスト高、人材不足を懸念していることから、IT運用の自動化・自律化の浸透が必須である。そのため、われわれは新ソリューションで支援する」と、意気込みを語っていた。
価格は、あんしん Ansible パック for HPE Synergyが676万5000円(税別)~、同 HPE SimpliVityが653万3000円(同)~。