日本IBMは10月4日、AIを活用した企業変革を支援するため企業全体における戦略的かつ効率的なAI活用を顧客が自社で推進するための包括的なサービスおよびツール群「IBM Services AI Enterprise Knnowledge Foundation」の提供を開始した。
新ソリューションははAI活用の戦略策定から導入支援、AI人材の育成など多様なサービスをまとめたサービス群と、データ、アルゴリズム、モデルなどのAI資産を公平性かつ透明性を保ちながら統合的に管理し、システム構築・運余蘊の品質向上や効率化を推進するツール群で構成。
日本IBM 取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長の山口明夫氏は新ソリューションを提供する背景について「AIはコールセンター、医療から適用が進んだが、多種多様な業種に適用が拡がっているほか、従来は1つの企業で1つのAIを導入していたものの、現在は1つの企業で多様なAIを導入・検討している。さらに、各企業がAIを活用・発表しており、マルチAIをいかに管理・運用していくかが重要となっている。AIを活用する市場の潮目が大きく変わりつつある」との認識を示した。
新ソリューションのうちサービスでは「AIマネジメント支援」「AIガバナンス支援」「AIプロジェクト導入支援」「AI運用・再学習支援」「AI人材育成・スキル移管支援」の5つを提供する。
AIマネジメント支援はAI活用のための戦略策定、ロードマップの作成・管理、投資対効果のモニタリングなどを行い、AIガバナンス支援では管理プロセスの定義・実行や訓練データ、モデル、アルゴリズム、検証データなどのAIナレッジの管理する。
AIプロジェクト導入支援に関しては、新規プロジェクトを推進するためのユースケースの定義や、技術検証支援、本番導入支援を行い、AI運用・再学習支援についてが既存プロジェクトにおいて、目標値(KPI)に対するダッシュボードの構築や運用、さらなる品質向上のための再学習を実施。
AI人材育成・スキル移管支援はデータサイエンティストの育成支援や、AIシステムに関するスキルの提供を行います。また、AIの全社展開を図るための横断的な組織(COC: Center of Competency)を設立するための支援も行う。
また、AIシステムに関するデータ、アルゴリズム、各種ツールなどの資産を統合的に管理して再利用を可能にするツール群を整備。9月19日(米国時間)に米IBMが発表したAIによる意思決定のバイアスを検出・軽減するソフトウェアサービス「Trust and Transparency capabilities」も含まれる。
日本IBM 執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長の吉崎敏文氏は「AIの活用は部門ごとにクラウドを用いて展開されており、部門だけの知見ではなく、全社の知見として企業の競争優位に活用してもらうものだ」と、強調する。
そして、Data&AIプラットフォームであるWatsonを提供していく中で気付きを得たという。その気付きを昇華した製品がTrust and Transparency capabilitiesだ。
吉崎氏は同製品に関して「公平性と透明性を保つ製品だ。AIの実行時に自動的にモデルの公平性を評価し、バイアスがあるモデルを通知し、軽減のための取り組みを示す。また、AIによる予測にトレーサビリティとオーディタビリティ(監査性)を提供し、業務アプリで使われるAIパフォーマンスを監視するほか、AIによる出力やレコメンデーションをビジネス用語で説明する」と、説く。
具体的には、AIモデルの性能を正確性、公平性、トランザクション量の3つの指標で表示し、AIモデルが利用している判定の項目と時系列の判定結果を表示し、アプリケーションに組み込まれているAIモデルを可視化するダッシュボードで確認を可能としている。
例えば、下の図では18~23歳からの保険申請のうち、不正ではないと判定された割合が52%となっており、そのほかのクラスタ群と比較してバイアスの可能性があることを示唆してくれる。
正確性に関しては特定のビジネストランザクションIDについてAIがどのような判定を行ったか、その判定にどの項目が強く影響したを表示する。
まずは、Watsonを含めた多数のAPIとサービスが無料で使えるライトプランにおいて無料で提供し、正式な価格は11月に発表を予定している。