NECは10月1日、AI(人工知能)の社会実装や生体情報の利活用がプライバシーなど人権に与える影響を考慮し、「Human Rights by Design(HRbD)」に基づいた戦略策定・推進を行うため、専門組織「デジタルトラスト推進本部」を新設した。
HRbDは、「Privacy by Design」の考えを人権全体まで広げ、プライバシーのみならず公平性など人権尊重の考え方をバリューチェーンの各プロセスに組み込むアプローチ。
新組織は、技術に加え、法制度・倫理など社会受容性に係わるノウハウを有する専門要員で構成するほか、有識者・NPO・消費者など、さまざまなステークホルダーから構成される「外部有識者会議」を設置。これにより、AIや生体情報など各種データを扱う事業で生じる新たな課題への対応力を強化する。
具体的には、(1)データ流通に係わる事業の戦略策定・推進、HRbDに基づく製品・ソリューションの企画、(2)HRbDに基づく全社ポリシーや社内ルールの策定・マネジメント、(3)ステークホルダーとの対話によるコンセンサスの獲得や政策提言、(4)従業員や取引先などバリューチェーンに係わる関係者のHRbDに対するリテラシー向上施策、などを行う。
同社は昨年4月に「データ流通戦略室」を設立し、パーソナルデータの利活用に向けた戦略策定や政策提言などを進めてきた。新組織は、デジタル時代において世界から信頼され続ける企業でありたいという思いで「デジタルトラスト推進本部」と命名し、従来の体制と機能を強化し、全社を牽引するという。
現在、グローバルな社会課題解決に向けて、パーソナルデータを活用した新サービスやイノベーションの創出が期待されている中、プライバシーへの配慮、倫理や受容性を鑑みた活用原則・法制度への対応が重要となり、人とAIの共存への諸課題に対するガイドラインについても国際的な議論・検討が進んでいる。新組織の設立は、事業者としてそれらを具体化・実践する取り組みとなる。
AI技術群「NEC the WISE」やIoT技術、顔・虹彩・指紋/掌紋・指静脈・声・耳音響等の生体認証「Bio-IDiom」などを活用した社会ソリューション事業を推進しており、「2020中期経営計画」ではセーフティ事業をグローバルの成長エンジンと位置づけ、新組織ではこれら成長事業の遂行に重要な機能を果たすという。
また、社会課題起点で事業を進める道標として、7月にはESG(環境・社会・ガバナンス)視点で経営が優先して取り組む9テーマ(マテリアリティ)を特定。その1つである「社会受容性に配慮したプライバシー」を新組織が中心となり、推進していく方針だ。