台湾TrendForceのメモリ市場調査部門DRAMeXchangeによると、DRAMメーカーが9月末に向けて大口顧客と2018年第4四半期(10~12月期)の契約価格の交渉を終えようとしているが、メモリーメーカーが提示する見積価格(平均)は、前四半期と比較して5%ほど低下する見通しとなっているという。

同社の8月時点での調査では、1~3%程度の価格低下との見込みであったが、ここにきて価格の下落率が拡大してきた模様である。その原因は、ビット出荷量が増加しているにも関わらず、年末商戦で伸びるはずの需要が、期待ほど伸びていないためであるとしている。

  • 2018年第4四半期に向けた用途別DRAM製品の大口契約価格の変遷

    2018年第4四半期に向けた用途別DRAM製品の大口契約価格の変遷 (出所:TrendForce/DRAMeXchange, 2018年9月)

DRAM価格のトレンドとしては、2018年第3四半期まで9四半期にわたって上昇基調となっていたが、同第3四半期には、価格が天井に達した兆候が見えていた。PCおよびサーバDRAMはまだ若干の値上げ基調が続いていたが、モバイルやグラフィックスDRAMは横ばいないし下落傾向となっていたほか、DRAMのスポット価格も年初から下落が続き、6月末には契約価格を下回っており、現在は、契約価格よりも10%ほど低い値となっているという。

PC/サーバDRAMの契約価格も5%ほどの下落へ

サーバDRAM市場は、これまで北米のデータセンターからの注文と、次世代プラットフォームへの移行が需要を支える役割を担ってきた。2018年上半期は、DRAMの供給が逼迫したことから、サーバベンダは二重予約で供給を確保するなどの工夫を見せる一方、DRAMベンダ側も製品ミックスにおけるサーバDRAMの比率を高めるなどの取り組みを進めたことから、注文に対する供給率が改善され、不足が緩和されるようになり、価格が安定化。第4四半期はスポット価格の下落と、サーバ需要の不透明さが重なることから、前回予想の最大2%減という見方から、5%ほど価格が下落する見通しへと予測を引き下げている。こうした動きを受けてか、すでに韓国のDRAMメーカーは、同四半期の販売目標価格について、引き下げを行なっているという。

一方、PC向けDRAM市場も供給過剰に加え、IntelのCPUが供給不足となる可能性があることから、前回の最大4%の下落から、5%下落へと予測が引き下げられている。また、すでに特殊用途向けDRAMに関しては、米中の貿易戦争が市場に不確実性をもたらしたため需要が低迷しており、9月以降は価格は下げ基調に転じており、第4四半期の契約価格は、PC DRAMやサーバDRAMよりもさらに急激に下落する可能性が高いとDRAMeXchangeは見ている。

さらに、新型iPhoneの出荷による需要押し上げが期待されたモバイルDRAMだが、新型iPhoneが想定以上の金額であったため、販売台数はそれほど伸びず、その結果、モバイルDRAMも供給過剰となり価格が下落する可能性が 高いとRAMeXchangeは見ている。具体的には、第4四半期のDRAM単体価格が最大5%、平均で約3%の低下としているが、eMCPについては、NAND価格の下落も相まって、最大8%ほど下落する可能性があるという。

なお、Samsung Electronicsは、DRAM市場の需給バランスを精査したうえで、DRAMの増産を続ける競合他社に先駆けて、DRAMへの設備投資と増産計画を延期し、価格低下をおさえつつ利益の確保をしようという戦略を採用しており、こうした動きに対し、他の競合メーカーが、今後シェア向上のためにDRAM増産を続けるのか、あるいは利益確保のために生産調整するのかが注目される。