IDC Japanは9月25日、国内エンタープライズインフラ市場(サーバおよび外付型ストレージを含む)におけるアクセラレーテッドコンピューティングの予測を発表した。
同社はエンタープライズインフラ市場において、特定の計算処理を一般的なCPUからオフロードし高速に実行する処理をアクセラレーテッドコンピューティングと定義。
具体的には、GPU(Graphics Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)をはじめとした標準的なx86以外のプロセッサをCPUやアクセラレーターとして搭載するサーバと、そのサーバに接続する外付型ストレージを主な対象としている。
特定のワークロードの計算需要がCPUの計算性能向上のペースに比べて急速に高まり、処理性能のギャップが顕在化し、この解消のために採用が増加しているという。
AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)向けでは、一般的なCPUだけを計算に用いるサーバと比べて高密度な配置と高い電力性能を実現する可能性が高いことから、アクセラレーテッドコンピューティングが国内エンタープライズインフラ市場における重要な成長分野になると予測している。
2017年から2022年の年間平均成長率(CAGR)は13.2%であり、2022年の市場規模は978億2300万円と推測。同市場に占める割合は、2017年の7.8%から2022年の16.8%へと拡大し、市場全体の約1/6を占めるという。
配備モデル別に見ると、プライベートクラウドを含むクラウド向けの支出額のCAGRが16.5%、クラウド以外のCAGRが12.0%になると予測しており、AIやIoTなどの新しいワークロードはクラウドに比較的多く配備し、科学技術計算に代表される従来のワークロードはクラウド以外に配備する傾向があるとの認識を示している。
アクセラレーテッドコンピューティングでは、半導体設計プロセスの微細化だけによらない計算性能の向上を実現していくため、需要のある計算の種類や扱うデータが多様化することにより、新たな技術によるシェア獲得の機会が増えていくという。
そのため、GPUやFPGAに加て、国内資本のベンダーによる新たな技術に基づく製品やサービスも市場へ投入している。普及を進めるにあたり、製品開発に加え、対応ソフトウェアの開発、導入、利用を支援するベンダー内外の体制構築が必要になると指摘している。
同社のエンタープライズインフラストラクチャ マーケットアナリストである加藤慎也氏は「AI向けの計算需要の拡大に伴い、科学技術計算を中心に発展してきたアクセラレーテッドコンピューティングがエンタープライズインフラ市場の成長に貢献していく。アクセラレーターには大きな可能性がある一方、新技術の乱立により、採用する側の企業において自ら適切な技術を選択することが困難になる可能性がある。ベンダーは、提供するアクセラレーターの種類の多さや製品技術の優位性を訴求することはもちろんだが、あわせてユーザーが選びやすいソリューションとしての提供形態を整えるべきである。そのためにも、早期のエコシステムの構築が求められる」と説明している。