スタートアップの挑戦をカタチにする場所
アマゾンジャパンは今年5月、目黒駅前の目黒セントラルスクエアに新オフィスを開設すると発表した。目黒セントラルスクエアには、アマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパンのスタートアップ企業を支援する施設「AWS Loft Tokyo」も開設される。10月1日のオープンに先立ち、「AWS Loft Tokyo」のお披露目が行われた。
「AWS Loft Tokyo」を統括するのは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業開発部 プリンシパルマネージャーの畑浩史氏だ。同氏は、同社はこれまでスタートアップと共に成長を遂げてきており、「スタートアップの支援は当たり前のこと」と語った。
AWSはこれまでスタートアップの支援策として、「AWS Active」「ソリューションアーキテクトによる支援」「One Amazon(Amazonグループとしてのビジネス支援)」「Startup Day(スタートアップに特化したラーニングイベント)」を提供してきた。「AWS Active」は、1年間に最大10万ドルの有料サポートが無料で受けられるというもの。筆者がAWSのスタートアップを取材したし、AWS Activeが非常に役立ったという話を何度も聞いた。
これらの支援策に、今回、「AWS Loft Tokyo」が加わったことになる。同社は、「AWS Loft Tokyo」を「スタートアップやデベロッパーが学び、コーディングし、交流し、『挑戦をカタチにする場所へ』。」と定義している。永続的な「AWS Loft」としては、サンフランシスコとニューヨークに続く、3番目の拠点となる。
具体的に、「AWS Loft Tokyo」では「コ・ワーキングスペース」「Ask An Expert」「イベント」をプログラムとして提供する。どのサービスもAWSアカウントを持っていれば無料で利用できる。
「コ・ワーキングスペース」には、電源、Wi-Fi、電話ブース、会議室、カフェが設けられており、予約は不要で、平日10時から18時まで利用可能だ。
「Ask An Expert」は、常駐している同社の技術エキスパートからアドバイスを受けることができるプログラムだ。こちらも予約は不要だ。「電話やメールでは改まって聞きづらいこともエキスパートに気軽に聞くことができる」と、畑氏は「Ask An Expert」の魅力を語っていた。
「イベント」では、AWSが提供するサービスに加え、一般的な技術やスタートアップをテーマとして開催される。10月は既に「Amazonのカルチャーとエンジニアリングにおける実践」「Developer Technology Night」「AWS Startup Tech Meetup」といったイベントが予定されている。
デジタルトランスフォーメーションを体感できるラボも開設
「AWS Loft Tokyo」には、先端的な領域について、コンセプトメイキングやラピッドプロトタイピングなどを、顧客と共に実施していくワークショップラボ「デジタルイノベーションラボ」も併設されている。
同ラボについては、アマゾン ウェブ サービス 技術統括本部本部長技術統括責任者 岡嵜禎氏が説明を行った。同氏は、同ラボの役割について「デジタルトランスフォーメーションは言葉でいうのは簡単だが、実現は難しい。デジタルイノベーションラボでは、IoTやマシンラーニングを使って、してデジタルトランスフォーメーションを実現する一歩を支援していきたい」と述べた。
同ラボで体験できるプログラムは「Digital Innovation Program」「プロトタイプ」「ハンズオン、ワークショップ」となっている。
「Digital Innovation Program」は、「プレスリリース・ファースト」などの独自の手法で、アイデアを考えて実現するためのプログラムだ。「プロトタイプ」は、アイデアは持っているが、実現する手段がわからない場合に有効なプログラムだ。「ハンズオン、ワークショップ」では、IoTやマシンラーニングといった先端技術について学ぶことが可能だ。
同ラボでは、次の7つのソリューションのデモを体験できる。実際に、説明会でもこれらのデモが披露された。
- 動画を利用したIoT
- ARによるメンテナンス業務の効率化
- スマートファクトリーにおける異常検知
- クラウドにおける動画のリアルタイム物体認識と配達
- エッジコンピューティングを活用した物体・行動認識
- Alexa連携デバイスクラウド
- ITSデモ:タクシー運行の効率化
最近、ベンダーによるデジタルトランスフォーメーションを実現するソリューションを体験できる施設が増えているが、AWSのラボの特徴は、AWSのクラウドサービスを使うことで、本来は必要なデータの加工やシステムのカスタマイズが不要になっている点だろう。スタートアップを支援する施設内にあることから、スタートアップとの距離が近い点もコラボレーションによって新たなソリューションを開発するという点で有利と言える。短期間でデジタルトランスフォーメーションを実現した企業にとって、「デジタルイノベーションラボ」は一見の価値があるのではないだろうか。