Nokia バイスプレジデント エネルギー・運輸・公共事業部グローバル事業責任者 クリス・ジョンソン氏

ノキアは9月14日、国内のエネルギー、運輸、公共向けネットワーク事業への本格参入に向けた事業戦略説明会を開催した。グローバルの戦略、動向、実績については、バイスプレジデント エネルギー・運輸・公共事業部グローバル事業責任者のクリス・ジョンソン氏が説明した。

ジョンソン氏は、2016年11月に発表したグローバル戦略「 Rebalancing for growth」の柱の1つとして、通信事業者に提供する高品質かつ高信頼の ネットワークソリュー ションを、ミッション クリティカルなエンタープライズ領域にも展開することを据えていることを紹介した。

続いて、ジョンソン氏は、「都市化と都市におけるコネクティビティの進化」「パブリック&プライベートクラウドの増加」「産業・政府機関のオペレーションとビジネスモデルのデジタル化」「グローバル規模でのエネルギーの効率化と持続可能なリソースの最適化」「人とモノの移動システムの革新」「個人データへのアクセスと保護」「従来型通信サービスの衰退」といった、エンタープライズの市場で起きているトレンドと同社の製品ポートフォリオが合致していることを示した。

同社は、パブリッククラウドから、プライベートクラウド、エッジ(IoT)まで、企業におけるITシステムをエンド・ツー・エンドでカバーする製品を提供している。

  • ノキアの製品ポートフォリオ

ノキア 執行役員 エネルギー・運輸・公共事業部 事業部長 奥田浩一郎氏

続いて、ノキアの日本法人で執行役員 エネルギー・運輸・公共事業部 事業部長を務める奥田浩一郎氏が、エネルギー・運輸・公共における導入事例、国内における戦略を説明した。

導入事例は、企業が自社専用として構築する「プライベートLTE」の採用をしたものを中心に紹介された。例えば、米国のエネルギー会社であるSempra Energyは、「再生エネルギーの増大に伴う電力需給のコントロール」「設備・機器の効率的な監視」「新たなビジネスモデルの構築」といった課題を抱えていた。

奥田氏によると、風力発電はトラブルが多く、例えば、ブレードが故障すると、その修理と時間にコストがかかるそうだ。そこで、発電装置にセンサーを付けて、プライベートLTEを構築することで、風力発電の監視とモニタリングを行うことにした。モニタリングすることで、装置の故障を予知して早めに修理することが可能になる。

また、オーストラリアの資源会社であるRio Tintoは「採掘現場の過酷な労働環境に伴う作業員のコストの高騰、人員確保が困難」などの課題を抱えていた。採掘現場のトラックは作業が過酷なこともあり、1台につき8人から10人アサインンする必要があるが、人員の確保が難しかったという。

同社もプライベートLTEを構築することで、トラックの無人運転と建機のリモート運転を実現した。奥田氏は「キャリアのネットワークやWi-Fiでは実現できなかった」と語る。加えて、ドローンで地形を確認するといったことも行われているという。

そのほか、米国の警察、消防、救急医療関係者などが利用する第一応答者専用のネットワーク「FirstNet」では、警察と消防において有事における通信網の相互接続が課題となっていた。

これは、9.11の時の教訓だという。「9.11でビルが崩壊した際、警察はその情報を持っていたため、警察官は逃げることができたが、消防は情報を持っていなかったため、消防官の多くが犠牲となった」と奥田氏。この時、警察が消防に情報を伝えていたら、消防官の命を救うことができた。

そこで、ノキアはAT&Tの基地局網を活用した複数の周波数をカバーするLTE通信装置を設置することで、プライベートLTEを構築し、米国全土に渡るパブリック・セーフティ・ネットワークを実現した。

公共分野においては、2017年10月に仙台市と連携の協定を結んだ。ノキアは、緊急事態や脅威に対応可能なミッションクリティカルなネットワークを提供する計画だ。

奥田氏は、国内における戦略として「グローバルのテクノロジー情報の開示」「グローバルの事例情報の開示」「日本の独自要件への対応」「パートナーシップの重視」「顧客やパートナーの海外輸出の支援」を挙げた。

今後、ノキアは5G/LTEを活用してIoT環境を構築することで、エネルギー・運輸・公共業界が抱える課題を解決していく構えだ。

  • エネルギー・運輸・公共業界における通信トレンド

  • 5GとLTEで実現するユースケース