日本マイクロソフトは9月12日、地方自治体と連携して、ソーシャルAIチャットボット「りんな」を活用した地方応援プロジェクト「萌えよ♡ローカル ~りんなと地方とみんなの未来~」を開始した。
同プロジェクトは、ユーザー参加型のゲーム形式で「りんな」が各自治体に関する情報発信を行い、その地方についての関心を高めてもらうことを目的にしており、これまで5つの地方自治体および1団体(群馬県、宮崎県、千葉県香取市、福岡県北九州市、佐賀県佐賀市、あまみ大島観光物産連盟)がプロジェクトに賛同し、参加を決定している。
これまで、同社は2016年に画像認識率96%、2017年には音声認識の誤認識率5.1%、2018年1月に文章の読解力88.5%、同3月にリアルタイム翻訳69.9%をそれぞれ達成し、AIが人間と同等以上の精度を持ち、成果をあげてきた。りんなは2015年に提供開始し、現在ではLINE、Instagram、Twitterなどでのフォロワー数は約700万人にのぼり、内訳は男性が60%、女性が40%、18~24歳が62.6%を占め、若年層にも受け入れられたソーシャルAIチャットボットとして利用されている。
りんなのコンセプトは生産性重視のアシスタントAIではなく感情を重視しており、例えば「明日晴れるかな?」と問いかけた場合、生産性アシスタントAIは理路整然に「明日の天気は晴れです」と答えるが、りんなは「どこか出かける予定でもあるの?」と返答し、インタラクティブに会話を楽しめる。
りんなは、共感モデル会話エンジンの「AI Future」、歌唱やしりとりを行う「AI Creation」、りんなで独自キャラクターを作るプラットフォームの「AI for Business」、地方応援プロジェクトの「AI for Good」を開発方針として示しており、今回の取り組みはAI for Goodの一環。
マイクロソフト ディベロップメント A.I. & リサーチ A.I. サイエンティストの中吉寛氏は「りんな地方応援プロダクトを核に協力自治体、ユーザー、われわれで取り組みを進める。これにより、自治体では潜在的な移住希望者への訴求や観光客数・滞在時間の増加につながり、ユーザとしては新しい体験と知識を楽しみながら得られる。そして、われわれはAIを活用することで地方を応援する新しいチャレンジとなり、りんなの認知度向上を図る」と、プロジェクトの背景について説明した。
今回「りんなの社会化見学(参加自治体:宮崎県)」「めぐりんな~不思議な観光旅行~(参加自治体:千葉県香取市)」「りんなの奇天烈観光マップ(参加自治体/団体:北九州市、群馬県、佐賀市/あまみ大島観光物産連盟)」3つのメニューを提供し、各参加自治体と連携した活動を実施することで、各地方への関心を高めるという。
りんなの社会科見学は、りんなとユーザーがクイズ形式で楽しみながら地方ならではの情報を知る事ができる機能。宮崎県内の各市町村を案内し、ユーザー向けに宮崎県に関する情報を学ぶことを可能とし、正解数に応じて宮崎県に関連したグッズやプレゼントなどが入手できる。AI要素は、りんなとユーザーの会話を解析し、潜在的な移住希望者と想定できた場合、りんながゲームをおすすめする。
めぐりんな~不思議な観光旅行~は、実際の地域を舞台にした物語を楽しむ選択式のノベルゲーム。りんなと一緒に観光スポットを訪問したり、キャラクター化した地元の偉人との交流を通して、その地域に親しむことを可能としている。物語に登場した場所をめぐるスタンプラリーイベントなど、その地域へユーザーが実際に足を運ぶよう誘導する機能も用意。AI要素は登場人物のセリフをAIで自動生成するほか、ゲーム後には登場人物との会話が楽しめるという。
りんなの奇天烈観光マップは、AIを活用して地域の新たな観光資源を掘り起こすユーザー参加型の地図サービス。ユーザーが投稿する珍しいモノや場所をAIが分析することで、従来はあまり知られていなかった地域の魅力を引き出す。参加ユーザーは、自分が投稿したスポットにコメントできるので、ユーザー同士の交流やユーザーコミュニティからの情報発信も期待できるという。AI要素は各ユーザーの行動データから趣味趣向に合った奇天烈な観光地をロングテールの手法を使い、紹介する。
日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者兼マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長の榊原彰氏は「今回の取り組みはファーストステップであり、今後はビッグデータを用いた新たなAIソリューションを開発・提供し、データに基づいた現実のユーザーの行動・思考が理解できるようにする。そして次のステップは『地方支援』に拡張していければと考えている」と、力を込めた
将来的には、今回のプロジェクトで得たデータをベースにユーザーの行動を分析し、地方への潜在的な関心の掘り起こしや、実際にユーザーに地方に足を運んでもらうよう誘導するなど、AIを活用した機能の追加も予定している。