私たちを照らす恵みの太陽も、もとはといえば宇宙空間を漂う薄いガスだった。ガスが自分自身の質量(重さ)で集まって縮み、周りのガスは円盤状になって回転を始める。やがて中心のガスの塊は本格的な「星」となって光りだし、ガスの円盤からは、中心の星の周りを回る惑星ができる。このような惑星の形成は、最初にガスが集まり始めてからどれくらい早い段階で助走を始めるのか。
東京大学修士課程の大小田結貴(おおこだ ゆき)さん、山本智(やまもと さとし)教授らの研究グループは、生まれてからわずか1000年の「原始星」の周りで、すでにガスの円盤が回転していることを、南米チリの高地にある「アルマ望遠鏡」を使った観測で確かめた。宇宙誕生から138億年、私たちが住む惑星系である太陽系の誕生からは46億年という長い年月を考えると、「1000年」は、まさに誕生と同時といってもよい早い時期だ。「ある程度しっかりした原始星ができてからガス円盤が回転を始める」というこれまでの考え方に、新たな光をあてる結果だ。
大小田さんらは、この原始星の周りにある一酸化硫黄ガスが出す電波を、高分解能で観測した。その結果、ちょうど惑星のように重力と遠心力がつりあって中心の星の周りを回転する、小さいながらも立派なガスの「原始星円盤」ができていることがわかった。その回転スピードをもとに計算したところ、この原始星の質量は太陽の0.7%ほど。これまでにみつかっていた原始星は太陽質量の10%くらいより大きかったので、大幅な記録更新だという。
もうひとつわかったのは、この原始星の質量と、その周りを回っているガス円盤の質量がほぼ等しいことだ。大小田さんによると、中心の原始星が重くて円盤が軽い場合は、円盤は安定して回転する。ところが、それらが似たような質量の場合、この回転が不安定になって、あるとき突然、ガスが原始星をめがけて落ち込み、一気に星に加わる可能性があるという。原始星が少しずつ成長するのではなく、あるとき激しく急に成長する可能性を指摘するものだ。
大小田さんによると、質量が太陽の100分の1から10分の1くらいまでの原始星は、まだ報告例がない。つまり、今回の小さな原始星と、これまでにみつかっていた原始星との間をつなぐ観測例が、まだないのだという。このあたりの観測が進めば、私たちの太陽系ができたしくみも、さらにはっきりわかってくるのだろう。
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