ナノテクノロジー分野で世界的に評価を受ける顕著な業績を上げた研究者に授与される「第15回江崎玲於奈賞」に東京大学生産技術研究所・光物質ナノ科学研究センターの平川一彦教授(58)が選ばれた。同賞の授与組織である茨城県科学技術振興財団が3日発表した。電磁波の一種で、超高速に振動する「テラヘルツ波」を用いた計測技術の先駆的な研究が評価された。
茨城県科学技術振興財団によると、受賞の対象となった研究主題は「テラヘルツ技術の開拓によるナノ 構造の電子物性解明の先導的研究」。平川氏は、テラヘルツ波を使い、半導体の中で超高速に振動している電子の動きを解明。高感度のテラヘルツ検出器を開発するなど、テラヘルツ技術の前線を開拓してきた。テラヘルツ技術は、固体物理や電子工学のほか、医学や生物学への活用も見込めるという。
このほか、茨城県内で科学技術の振興への貢献が期待される優れた成果を上げた研究者に贈られる「つくば奨励賞」の実用化研究部門に日立製作所・制御イノベーションセンタの中津欣也主管研究長(50)と、日立オートモティブシステムズ・佐和事業所パワートレイン事業部の斎藤隆一主管技師(62)が、同賞の若手研究者部門に物質・材料研究機構・磁性材料グループの桜庭裕弥グループリーダー(39)が選ばれた。
今年は、茨城県内で研究をしたか、あるいは同県内での国際学会で成果を発表し、江崎玲於奈賞に準じる顕著な業績を上げた研究者に贈られる「つくば賞」の受賞者はいなかった。
江崎玲於奈賞はノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈博士にちなみ、科学技術振興を目的に2003年に創設された。受賞者には賞状と副賞1000万円(協賛:関彰商事)が贈られる。11月につくば国際会議場(つくば市)で授賞式と記念講演会が開かれる予定。
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