富士通は9月6日、「FUJITSU Server PRIMERGY 液浸冷却システム」を日本国内で販売開始し、順次グローバルに展開していくと発表した。

昨今、大量のデータを処理するIoTやAI(人工知能)など新技術が普及を続ける中、そのシステム基盤となるサーバはさらなる高性能化が求められてる。一方で、高速処理で発生するサーバの発熱量の増大に伴い、その冷却にかかる電力や設備スペースの増加が問題となっており、仕組みの改善が急務となっているという。

新製品の主な特徴として「高効率な冷却技術による大幅な低消費電力化と省スペース化」「容易なメンテナンスを実現」「設置からアフターサポートまでワンストップで提供」の3点を挙げている。

  • 「液浸冷却システム」の液浸槽

    「液浸冷却システム」の液浸槽

  • サーバを取り外し、冷却液から引き上げる様子

    サーバを取り外し、冷却液から引き上げる様子

低消費電力化と省スペース化では、サーバを高い伝熱特性と絶縁性を持つ液体に浸すことで、サーバ全体を偏りなく効率良く冷却することができる。また、サーバが発する熱が室内に排出されないためサーバルームなどの空調設備を必要としないほか、サーバに内蔵する冷却ファンも不要とすることで、PUE(Power Usage Effectiveness:ICT機器の消費電力と冷却設備などの付帯設備の消費電力の合計を、ICT機器の消費電力で割った値で、データセンターやサーバルームのICT機器の電力使用効率を示す指標)値1.07を実現しているという。

これにより、空冷システムに比べて冷却設備を含めたサーバシステム全体の消費電力を約40%削減するとともに、設置スペースあたりのサーバ集積密度を約2倍にすることを可能としている。

容易なメンテナンスに関しては、同社が独自開発した密閉性の高い液浸槽により、冷却液の揮発を最小限に防ぐことができることに加え、冷媒として使用する冷却液は不燃性かつ人体にも無害で品質が劣化せず定期交換が不要なため、メンテナンスも容易となっている。

設置からアフターサポートまでワンストップで提供することについては、液浸槽やCDU(Coolant Distribution Unit:備えられたポンプでサーバ浸漬用の冷却液を循環させ、熱交換器により冷却水への熱移動を行う装置)の設置から配管工事、サーバの運用保守作業、設備のメンテナンスなどのアフターサポートまでワンストップで提供。さらに、新製品は同社が提供するPCサーバ「Fujitsu Server PRIMERGY」シリーズのオプションとして提供するため、今後の最新モデルを液浸システムに組み込むことができるという。

冷却液に浸されたサーバは外気に触れることがないため、従来はサーバの設置に適さなかった高温多湿な地域や空気中に油分や塵埃が含まれる製造現場、塩害の恐れがある臨海地帯など様々な環境に設置することを可能としている。今後、液浸冷却技術を活用し、これまでにない場所での高性能サーバシステム構築を実現していく方針だ。