アジレント・テクノロジーは、同社の消耗品ビジネスの強化を目的に、糖鎖分析用の試薬、キット、標準物質などの提供を行なっている「ProZyme」、ならびに化学標準物質や認証標準物質などの提供を行なっている「ULTRA Scientific」の買収を完了したことを発表した。
同社で消耗品ビジネスを担当するケミストリー・サプライ品事業本部(CSD)においてジェネラルマネージャーを務めるポーリック・マクドーネル氏は、今回の2社の買収について、「CDSの戦略的優先課題は、顧客であるラボの成功に向けて、さらに総合的な"ワークフローソリューション"を提供していくこと。今回の2社の買収は、食品や環境、バイオ医薬など、複数の市場に対する能力および製品の強化を図ることを目的に行なったもの」と説明する。
「アジレントの顧客であるラボの成功には、ワークフローソリューションの提供と、デジタル化による顧客体験の向上・差別化の2つの軸が重要」と同氏は語る。ここでいうワークフローソリューションというのは、前処理から、分析の実施、結果の解析・解釈の実行、データをコンプライアンスに沿った状態での管理といったすべてのワークフローを一貫して提供していくというスタンスを指すもので、これと情報のデジタル化の推進を組み合わせることで、実際に分析をする際の支援と、消耗品を購入してもらう際の面倒な手間を省くという新たなビジネスプロセスの構築の両面で顧客への新たな価値の提供が可能になるとする。
特にデジタル化については、買収した企業の製品も含まれてくるが、「毎年、1000近くの新たな製品型番が追加される一方で、既存製品も2万点以上提供している。使う製品が同じであっても、提供する市場分野が異なる場合もあり、市場ごとに併せた製品を作って提供したりする必要がある。こうした多量の製品群の管理と、顧客の購入しやすさ、といったことを向上させるためには重要な取り組みとなる」とする。
具体的な方策としては、さまざまな取り組みが考えられるが、現状、全世界でのオンラインオーダー比率は50%(日本だけに限れば75%)であり、まだまだ改善の余地はあるという。「オーダー以外の情報もデジタル化したり、デリバリの状況をリアルタイムで表示したり、といったことも考えている」とするほか、分析機器や測定器などとそうしたデジタルの発注システムを連携させることで、現在は交換時期になるとフィルタの色を変えるなどして知らせている取り組みを、自動的に交換時期が近づいていることをアラートで知らせ、発注を促す、といった仕組みなどへと変更していくことも、長期的な視点では検討していきたいとしている。
なお、同氏は、今後の戦略として「アジレントの消耗品ビジネスとしては、顧客を中心に据え、何をしていくべきかを考える必要がある。顧客が何を求めているのか、これを理解し、顧客の成功を助けることを目指していく。そのために、もし、今回のような企業買収が必要となれば、それも選択肢に入ってくるほか、パートナーシップを締結して連携していく、といった戦略も考えられる」とし、世界的に進むデジタルトランスフォーメーションの流れに併せ、従来以上のビジネスのしやすさや取引のしやすさの実現を目指した取り組みを進めていく予定としていた。