Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは、9月5日から7日にかけて幕張メッセにて開催されている分析機器・科学機器専門展示会「JASIS 2018」にて、ガスクロマトグラフ(GC)「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」や、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)「Agilent Ultivo LC/TQ」などの紹介を行なっている。

誕生から2年が経った「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」

また、それに併せて各製品やサービスの多数の担当者が本国より来日。GCなどを担当しているガスフェーズ分離事業本部 マーケティングマネージャー インバウンド&プロダクトマネージメントのジム・ギアリング氏は、「Intuvo 2 Year Birthday」として、Intuvoを2016年に発売して以降、この2年間でどのような動きが起こったのかについて語ってくれた。

  • ジム・ギアリング氏

    アジレントのガスフェーズ分離事業本部 マーケティングマネージャー インバウンド&プロダクトマネージメントであるジム・ギアリング氏

Intuvoは、世界75社100名以上のユーザーやラボマネージャー、経営者へのインタビューをもとにニーズの分析を行なった結果、生み出されたGCで、同氏は、「アジレントが生み出してきた革新的な技術の集大成」と表現する。

  • 「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」

    JASIS 2018のアジレントブースに展示されている「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」

使い勝手やメンテナンス性など、さまざまな面を考慮して設計されたIntuvoのハードウェアの構造については、発表当時の記事を参照していただければと思うが、同氏は、「ここで強調したいのは、Intuvoは、単にGCを製品開発チームが作り上げた、というものではなく、カラムや消耗品、ソフトウェアなどアジレントの全体を取り込む形でシステムを開発、提供しているということ」と説明する。

その結果として、発売当初は10本ほどであった公開アプリケーションノートは、現在45本まで拡充されたほか、使用可能なカラムも、顧客ニーズに沿う形で2倍に増加。アナライザソリューションとしても、製薬分野からの要求が高い残留溶媒の測定・分析や血中アルコールの分析に加え、2018年7月には残留農薬の分析のためのものも提供が開始された。

また、その使い勝手の高さも各所で評価されるようになってきたという。化学や環境、香りといった特定分野に向けたウェビナーの公開などはもとより、同社の欧州リファレンスラボラトリー(EURL)からは、残留農薬の分析が従来ソリューションでは25分のところを13分に短縮できたほか、陽性と判定される率が36%増加、検出できる濃度を従来比で5倍ほど薄めた状態でも可能とすることで、サンプルの濃縮過程を含めた全体の作業時間の短縮が可能であり、生産性の向上が図れる、という報告がなされている。

さらに、食品や環境試料などの分析をてがける企業からは、残留農薬の分析の際、従来はメンテナンス時にカラムを外すために装置を停止させ、真空引きのしなおしが必要であったり、という装置を止める時間が生じたが、Intuvoではカラムを外すのではなく、ガードチップを変えるだけであるので、ダウンタイムが67%削減され、常に装置が動いている状態であるアップタイムの時間を広げることができたという報告がなされている。

Intuvo最大の特徴はインテリジェンス

従来、注入口などにカラムを接続する際、カラムの先端を切ると、もう一度、キャリブレーションテーブルを作り直す必要があったが、Intuvoではカラムを外すのではなく、ガードチップを変えるだけでよい、といった手軽さがあり、それが発売以降のアピールポイントの1つとなってきた。

しかし同氏は、そうした使い勝手の高さ以上に、Intuvoが有するインテリジェンスこそが、最大の特徴になると強調する。例えば、「自己診断テスト機能は、顧客から非常に評判が良い機能だ」、と胸をはる。これは、事前診断でシステムが滞りなく動いているかをチェック。問題があればアラートを出して知らせてくれ、メンテナンスも提示される指示通りに従ってすすめていくだけで対処することができる。「GCは複雑な構造の機器であるがゆえにメンテナンスを忘れたり、しにくかったりする部品が存在する。例えばスプリットベントが詰まっていても、詰まってしまったことに気付かないでシステムを稼動させることも多い。これが、Intuvoであれば、○○回使用したので、そろそろ交換したほうが良い、といったことを教えてくれる」と、インテリジェンスを装置に持たせることで、いかに止めずに稼動を最大限に引き出すか、といった取り組みが可能になったとする。

また、有線/無線LANに対応しているため、PCやタブレットなどのWebブラウザ上から、診断テストやメンテナンス、ログの確認などを行なうことが可能。遠隔地からもチェックできるため、実際に同社のエンジニアも、ラボの外から、そうした活用をして、ライフワークバランスの向上につなげている、という。「人体に影響のある物質を分析する際に、ずっと装置の近くに作業者が居なくても良くなる、といったメリットもある。ソフトウェアもファームウェアも常にアップデートを繰り替えしてきており、更新することで、さまざまな機能を追加することができる。遠隔利用もそうした機能の一部で、日本で注目を集める働き方改革にも貢献できると思っている」と、新たな機能が加わることで、意外な利用方法などの創出にもつながるようになるとする。

これから、Intuvoはどこに向かうのか

同氏は、これからもIntuvoの改善を進めていくとするが、具体的なロードマップの提示はなかった。ただし、顧客のニーズにマッチした製品を提供していく方針に代わりはない、とのことで、ハードウェアに限らず、ソフトウェアの改良により、さらに操作が簡便にできるようになったり、若い世代が開発に関わるようになることで、これまで想像しなかったような、新たな進化の方向性がでることなども期待できるようになるのではないかとしていた。