2018年8月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された、米VMwareの年次テクニカルコンファレンス「VMworld 2018」では、SDDC(Software-Defined Data Center)環境を中央データセンターからエッジコンピューティングまで拡大し、1つのコンソールから管理するコンセプト「Project Dimension」が発表された。
また、Amazon.comとの提携強化として、アジア太平洋地域における「VMware Cloud on AWS」の提供開始、さらに「Amazon RDS」を、VMware vSphere上で提供するサービス「Amazon Relational Database Service(RDS)on VMware」も発表された。
今回、ヴイエムウェア日本法人のトップとして参加した、上級執行役員副社長を務める山中直氏は今回のイベントを総括し、「われわれが提唱する『Any Cloud、Any Application、Any Device』というビジョンは、7年間変わっていない。その中で、日本のお客さまに対しては、何がどのように進化したのかを伝えることが重要だ。例えば、2018年第4四半期中より、東京リージョンで『VMware Cloud on AWS』を提供開始する意味は大きい」と語る。
2018年11月には日本でも顧客/パートナー企業を対象としたコンファレンス「vFORUM 2018」を開催する。その場において、今回の発表された方向性をどのように訴求していくのか。山中氏に話を聞いた。
--今回の「VMworld 2018」で発表された内容を、日本のお客様にどのように伝えていくか--
山中氏: VMwareは今年で20周年、日本法人も15周年を迎える。最初、われわれはサーバ仮想化で、サーバ間に存在したサイロを取り払った。さらに、ネットワーク仮想化の「NSX」で、ネットワーク(に拘束されているハードウェア)のサイロを取り払った。そして、現在はマルチクラウドで、クラウド間のサイロも取り払おうとしている。今回発表された「VMware Cloud on AWS」の提供開始と「Amazon RDS」は、そうした戦略の一環だ。
また、VMworld 2018では「Tech as forth for good(幸福追求のための技術)」の実践例として、サーバ仮想化によるCO2の削減実績や、アフリカの最貧国に最先端医療を提供する「Mercy Ships」の活動支援を紹介した。人権運動家であるMalala Yousafzai(マララ・ユスフザイ)氏を基調講演にお迎えしたのも、その現れだ。こうした活動を通じて、社会活動を積極的に行っていることもお伝えしていきたい。
-- 「VMware Cloud on AWS」に対する日本の顧客の反応を教えてほしい--
山中氏: 期待値はとても高いと感じている。これまでもBCP(事業継続計画)の観点から大阪リージョンでのサービスを開始してほしいとの要望が強かった。大阪リージョンは2019年第2四半期からの提供開始が予定されている。
前述したとおり、お客さまはサーバ仮想化を実現し、次にネットワーク仮想化/データセンター仮想化で、SDDCの環境を実現した。次のステップはハイブリッドクラウドの実現だ。だから「VMware Cloud on AWS」に対しては、お客様はもちろん、パートナー企業も期待している。
一方、「Amazon RDS on VMware」はAmazon.comが提供するサービスだ。最近はクラウドからオンプレミスに(環境を)戻す動きもある。今は、「オンプレ」か「クラウド」かの選択ではなく、環境に応じて最適に(アプリケーションやデータを)配置をすることが当たり前になった。
以前、われわれはお客さまとともに「仮想化ポリシー」を作っていたが、最近は「何をどこに置くか」といった、「クラウドポリシー」の策定を支援している。プライベートクラウド(オンプレミス)もパブリッククラウドも、シングルコンソールから1つのデータセンターとして管理できるメリットは大きい。
ハイブリッドクラウドが当たり前になれば、次のステップは、(複数のクラウドプラットフォームを運用する)マルチクラウドの時代になる。今回買収を発表した米CloudHealth Technologiesは、マルチクラウド管理ソリューションを提供するベンダーだ。今後こうした管理ソリューションが必須となることは間違いない。
-- VMworld2018では「デジタル ファンデーション」というキーワードが紹介されたが、その意味は?--
山中氏: 「デジタル ファンデーション」は、「デジタルの"礎"を築く存在」だと理解してほしい。われわれは(顧客にとって)そのような存在でありたいと考えている。
企業は、デジタルトランスフォーメーションの必要に迫られており、われわれ日本法人は「デジタルトランスフォーメーション推進室」を設けて、顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援している。そうした活動の中で感じていることは、(われわれが)顧客と価値を共有して顧客のビジネスを理解し、課題解決を支援しなければいけないということだ。単にインフラを提供して「(仮想化技術で)10台のサーバが1台になります」という話ではない。
「デジタルの"礎"」とは、エッジからパブリッククラウドまでをデジタルトランスフォーメーションする「コアプラットフォーム」だ。その意味において、今回発表した「Project Dimension」は顧客に新たな価値を提供できるものだと考えている。
-- 今回発表された「Project Dimension」をどのように日本で紹介していくのか--
山中氏: 「Project Dimension」は、中央データセンターからエッジコンピューティングまで1つのSDDC環境として利用できるようにするものだ。シンプルに考えると、SDDCをエッジにも配置するようなもので、技術的には未来の話ではない。
これまで(コンピューティングは)「集中」と「分散」の間で揺れ動いてきた。「Project Dimension」は、「集中」と「分散」が同時に発生したものだ。日本においては、製造業を中心にIoT(Internet of Things)に対する関心が高い。エッジコンピューティングを中央のデータセンターと同様のSDDCとして一元管理できる特性は、IoTを実現するうえで、メリットをもたらすはずだ。
--「Project Dimension」を推進するには業種別パートナーと組む可能性もあるのか--
山中氏: われわれはアプリケーションレイヤー領域には参入しないので、パートナーとの協業は大切だと考えている。将来的にProject Dimensionが普及すれば、われわれのパートナーが変わる可能性もあるだろう。同時にわれわれも各社のIoTに対する取組みを理解し、(彼らのビジネス課題をデジタルで解決できるよう)変わらないといけない。