アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS ジャパン)は8月31日、将来のIT人材を育成するために提供している教育プログラムに関する説明会を開催した。
説明会には、自由民主党 衆議院議員 総務大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官の小林史明氏が参加し、日本におけるIT人材不足の現状とIT教育の重要性について説明した。
小林氏は、経済産業省が2016年に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」を引き合いに出し、IT人材の不足に関する予測を示した。発表時点で、IT企業およびユーザー企業の情報システム部門に所属するIT人材は約91.9万人で、17.1万人不足しているところ、2030年にはIT人材が85.7万人に減り、78.9万人の不足を引き起こすという。
こうした中、まずは、小等中等教育・高等教育といった学校教育を通じて、日本人全体のITリテラシーを高める取り組みが行われている。加えて、トップ人材を発掘・育成するため、産業界のトップで活躍する人たちに参画してもらい、 個に着目した人材開発を行っているという。具体的な取り組みとしては、経済産業省所管の情報処理推進機構が主催している「未踏」、総務省が主催している「異能vation」がある。
加えて、小林氏は「デジタル・ガバメント実行計画」を紹介した。これは、政府が今年1月に発表した政府・地方・民間すべての手続きの電子化を実現するための施策だ。同計画における「プラットフォーム改革」として、行政情報システムのクラウド化(クラウド・バイ・デフォルト)が掲げられている。
「クラウド・バイ・デフォルト」においては、現在、1718の自治体がローカルにシステムを構築しているが、これらをすべてクラウドサービスに移行することを目指しているという。「基本的にはパブリッククラウドを検討するが、セキュリティなどの問題から難しい場合は、プライベートクラウドを検討する」と小林氏。
米国や英国などのクラウドサービスを利用している国々では、クラウド利用方針を示すとともに、クラウド認証制度を定めている。これを受け、今年8月より、国内でもクラウドの安全性を評価する仕組みの検討が開始されたそうだ。
このように、IT人材の不足が深刻化し、クラウドサービスへの需要が高まる中、AWSはどのような手を打っているのか。AWSの代表取締役社長を務める長崎忠雄氏が、ITプロフェッショナル育成に向け、同社が提供する学習支援プログラムについて説明した。
AWSはグローバルで高等教育機関を対象としたクラウドコンピューティングの学習カリキュラムとして「AWS Academy」を提供している。同カリキュラムでは、教育者と学生はAWS認定に向け、ハンズオンラボや実践的な学習機会を通じて、AWSのクラウドのスキルと知識を習得する。教育者は学生を指導する前にAWS認定を取得する。
長崎氏は、Global Knowledgeの調査「IT系資格保持者の年収ランキング2018」において、AWS認定を受けた人の年収が上位にランキングしていることを引き合いに出し、AWS認定を受けることのメリットを強調した。
長崎氏は2019年4月から、麻生情報ビジネス専門学校と船橋情報ビジネス専門学校の授業において、AWSクラウドを学プログラムがスタートすることを明らかにした。
「AWS Academy」に加え、14歳以上の学生を対象に、次世代の IT とクラウドのプロフェッショナルになるための教育プログラム「AWS Educate」もオンラインで提供されている。
「AWS Educate」では、学生に対し、クラウド関連のキャリアを選択する機会を供し、クラウド業界へのキャリアパスを支援する。具体的には、「分析とビッグデータ」「クラウドアーキテクト」「オペレーション/サポートエンジニアリング」「ソフトウェア開発エンジニア」といったキャリアパスを選択すると、コンテンツや学習プロセスをガイドするバッジなどがパーソナライズされる。
国内では早稲田大学、九州大学、広島大学などが「AWS Educate」を導入しているそうだ。
さらに長崎氏は、同社はこれまでインフラエンジニア向けの学習支援プログラムを多く提供してきたが、今後は、デベロッパーにも学習支援プログラムを拡充すると話した。
その具体的な取り組みが「AWS Loft Tokyo」「なな転び八起のAWS開発日記」「AWS DEV DAY Tokyo 2018」となる。
「AWS Loft」は今年10月にスタートする開発者やエンジニア、アントレプレナーの方々の AWS 活用や起業を支援するための拠点だ。来場者は、トレーニング、セミナー、ミートアップ、テクニカルハンズオンといったイベントに参加できる。
「なな転び八起のAWS開発日記」は、フロントエンド/サーバサイドエンジニアを対象としたクラウドのスキルを習得できる漫画を活用した学習コンテンツだ。同日に公開がスタートした。
同社はこれまで国内の年次イベントとして「AWS Summit Tokyo / Osaka」を開催してきたが、今年は、デベロッパーによるデベロッパーのためのイベント「DEV DAY 2018」を10月29日から11月2日にかけて開催する。