8月26日から5日間の日程で開催されている、米VMwareの年次テクニカルコンファレンス「VMworld 2018」(開催地:ネバダ州ラスベガス)。8月27日の基調講演では「Amazon RDS on VMware」やアジア太平洋地域における「VMware Cloud on AWS」の提供開始をはじめ、さまざまな製品のアップデートが発表された。
SDDCの管理性をエッジまで拡大
その中で同社が強調したのは、エッジコンピューティングに対するアプローチの強化だ。「VMware ESXi」をエッジコンピューティング向け「64ビットARM for Edge」に対応させたのもその一環だ。
IoT(Internet of Things)の普及や、あらゆる機器が相互接続する「つながる社会」の到来で、エッジコンピューティングにも大量のデータ処理能力が求められるようになった。同社は「数十億規模のIoT機器が世界中に分散する将来は、機器に近いエッジでのコンピュータもセキュリティや管理、自動化といった機能が必要になる」と主張する。
それを具現化したプロジェクトが、今回のコンファレンスで発表した「Project Dimension」だ。これは、SDDC(Software-Defined Data Center)環境を、中央データセンターからエッジコンピューティングまで同じように利用できるようにするもの。統合型のクラウド管理プラットフォームである「VMware Cloud Foundation」と、クラウドベースのコントロールプレーンを組み合わせ、VMwareが運用するエンド ツー エンドのSaaS(Software as a Service)として提供する。
ヴイエムウェア日本法人でストラテジックアライアンス本部 本部長を務める名倉丈雄氏は、「例えば、監視カメラの顔認証システムで収集した顔写真データ処理を、すべて中央サーバで実行するのは非現実的だ。一定の処理はエッジコンピューティングで実行するのが現実解だろう。その場合、エッジコンピューティングの管理やセキュリティの担保、エッジで処理されるデータの整合性といった課題が発生する。『Project Dimension』はそうした課題を解決し、中央のデータセンターからエッジまでを一括で管理するものだ」と説明する。
Project Dimensionの構成イメージはこうだ。
中央データセンターとエッジコンピューティングの中間点に、中央データセンターのサブセットである「マイクロデータセンター」を置く。現時点で、マイクロデータセンターのアプライアンスとして提供予定であるのが、DellとLenovoのハードウェアだ。これらマシン上で「vSphere(仮想化プラットフォーム」や「VMware Virtual SAN(仮想ストレージ)」「NSX(ネットワーク仮想化)」などの「SDDCパッケージ」を稼働させ、エンドポイント機器と中央データセンターを連携させつつ、エッジでのデータを処理する。マイクロデータセンターを、中央のデータセンターと同様のSDDCとして一元管理できるのが特徴だ。「この点が、エッジコンピューティングにvSphereやVirtual SANなどを個別導入する管理手法とは異なる」(名倉氏)
米VMwareのCTOでクラウドプラットフォーム担当を務めるKit Colbert(キット コルベット)氏は、「デバイス(機器)エッジは軽量のシステムマネジメントができる性能(の機器)をイメージしてもらいたい。一方、マイクロデータセンターは、汎用のアプリケーションを稼働させられる性能を持ったマシンだ」と説明する。
マイクロデータセンターを設置する理由は、「柔軟な対応」と「集中管理の簡素化」の実現だ。
名倉氏は「今後、5G(第5世代移動通信システム)が登場すれば、その帯域管理やセキュリティの追加といった作業が必須になる。また、IoT機器のメンテナンスも考慮しなければならない。そのためには、システムを2重化/抽象化し、『稼働させながら修正』といった対応が必要になる。こうした対応を『中央サーバ 対 デバイス(機器)』で行うのは現実的ではない。社会インフラ全体にIoTが普及することを考えれば、マネジメントまで組み込んだ一気通貫のシステムが必要不可欠だ」と説明する。
現在、「Project Dimension」はカスタマーフィードバックを得ている状態だという。Colbert氏は,「(Project Dimensionのような環境で)どのようなソリューションを稼働させたいのかを伺い、(Project Dimensionによって)顧客がどのようなメリットを享受できるのかを調査している」とコメントした。