NTTデータは8月23日、7月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の一環である「IoT技術を活用した新たなサプライチェーン情報共有システムの開発」の委託先に選定されたと発表した。

今回の実証事業は、2018年度中に貿易情報連携基盤システムの構築および北米やアジア向けコンテナ輸出を対象とした港湾での実証と効果検証を行うことで、電子化されていない事業者を含む貿易手続きに関わる事業者(輸出入者・フォワーダー・通関業・陸運業・ターミナルオペレーター・船会社・銀行・保険など)の生産性向上と輸出リードタイムの短縮に寄与することを目的としている。

日本の貿易業務における企業間の情報連携では紙媒体やPDFファイルが多用されており、人手による再入力やこれに伴う誤入力のチェック、修正のため多くの時間およびコストを要しているほか、複数の事業者が介在する貿易手続きにおいて、情報伝達・共有のプロセスが電子化されておらず、輸出者が貨物の状況を迅速に把握することが困難となっている。

こうした状況を受け、NEDOは貿易手続業務に関わる事業者の生産性向上と輸出リードタイム短縮に向けて、電子化されていない事業者を含む一連の関係者間で、貨物や手続き等に関するデータを共有できるデータ連携システムを構築し、特定の港湾での実証と効果検証を行う実証事業を公募。

同社では、2016年に国内初となる貿易分野にブロックチェーン技術を適用した実証実験や、ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤の実現に向けた検討と実証実験を実施するための貿易手続きに関わる事業者である輸出入者・船会社・銀行・保険等の大手企業による貿易コンソーシアムを発足させ活動を行ってきた。

実証事業では「貿易情報連携基盤システム」「システム連携を容易にするAPIなどの提供」「輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)とのデータ連携」「海外向け輸出を対象とした実証実験(予定)」「貿易手続情報に関するデータ標準や共有ルールの策定作業の協力」などを実施する。

  • 実証事業の概要と取り組み範囲

    実証事業の概要と取り組み範囲

貿易情報連携基盤システムでは、ブロックチェーンを活用したデータ連携システムを構築し、輸出入者・フォワーダー・通関業・陸運業・ターミナルオペレーター・船会社・銀行・保険などを含めた貿易手続きに関わる事業者間で、貨物や手続きなどに関する正確なデータをセキュリティが担保された形で共有できる仕組みを提供する。

システム連携を容易にするAPIなどの提供に関しては、自社システムを保有する事業者向けに自社システムとの連携を容易にする使いやすいAPIを提供するという。また、関係者間のデータ連携に課題を抱えている中堅・中小企業者の利用促進も考慮し、簡易なインタフェースの提供を検討している。

輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS:官民共同利用型のオンラインシステム)とのデータ連携については、データ連携方式を検討し、NACCSで処理される業務(税関そのほかの関係行政機関に対する手続きおよび関連する民間業務)との最適な連携を実現するとしている。

海外向け輸出を対象とした実証実験では、2019年1月から3月に北米およびアジア向けコンテナ輸出を対象とした実証実験を行い、輸出プロセスの効率化を図るという。貿易手続情報に関するデータ標準や共有ルールの策定作業の協力に関しては、NEDOが別途公募している貿易手続きに関わる事業者が手続情報を共有するためのデータ標準や共有ルール策定のための調査事業に協力する。

同社では、これまで取り組んできた貿易コンソーシアム活動と実証事業との相乗効果により、官民連携でのグローバルサプライチェーンにおける貿易手続きの効率化に向けて、2019年度中の貿易情報連携基盤の社会実装を目指す考えだ。