大学生の就職活動の一環として、インターンシップの参加が当たり前になりつつあるが、川崎市ではすべての中学校で職業体験に取り組んでいるという。本稿では、デルおよびEMCジャパンで行われた川崎市立川崎高等学校附属中学校の職業体験の模様をお届けしたい。
同中学校は、国際都市川崎のリー ダーとして国際的視野に立って活躍できる生徒の育成を教育理念として掲げ2014年4月に開校した川崎市公立初の中高一貫校。「体験・探究の重視」、「英語・国際理解教育の推進」、「ICTの活用」を3つの柱として教育に取り組んでいる。
デルは、同中学校の教育方針に賛同し、そのサポートを行いたいという思いから職場体験に協力することを決定したという。
デルでの職場体験は7月23日から25日の3日間にわたり行われた。授業内容は、初日が平手社長の講義と「傾聴」と「伝える」技術を学ぶワークショップ、2日目がパソコン基礎講座と営業電話のロールプレイ、最終日が営業体験と Skypeを使った会議、英語環境やVRの体験などとなっている。以下、初日の授業の様子を紹介する。
代表取締役社長の平手智行氏は「会社の経営」「社長の仕事」について、講義を行った。同氏は、株式会社の仕組みを説明した上で、経営者の仕事として「企業の方向性をつける」「資源を配分する」「人(社員)を動かす」の3点を挙げた。「会社の方向性を決め、人を育てて動かし、結果を出すのが経営者の仕事」と同氏。
「会社の方向性を決める」については、サッカーになぞらえてわかりやすく説明した。「戦略は、あれもこれもと立てるのではなく、あれかこれかを明らかにする。これにより、戦略に同意した人が集まる。つまり、意欲がある人が集まることになる」と平手氏。
「人を動かす」のポイントについては、「全員に参画しているという意識を持たせること、選択肢を用意することが大事」とした。
続いて、平手氏は「経営の実践」について語った。経営を行う際は、「会社の存在目的」「企業理念、ミッション(どうありたいか、どうなりたいか)」「戦略(何をやるか)」「戦略・実行計画・指標(どうやるか、どうなったか)」を順に明確にしていくことで、会社の方向性を決めていく。
さらに、平手氏は結果を評価し、失敗から学び、改善する「PDCAサイクル」を回すことが大事だと説いた。PDCAの中でも、特に「Do」が大事であり「今やれることを大切に」と同氏。
そして、会社が成長を続けるためには「顧客満足度が原点であり、これを高めるには、よい商品を提供する必要がある。そうすると、よい社員が集まるようになり、経営者もよくなる」と、平手氏は説明した。
最後に、参加した中学生から事前にヒアリングした質問に回答した。集まった質問とそれに対する回答は以下の通りだ。
- Q1「仕事をする上で大切にしていること、気を付けていることは?」
A1「仕事をする上で大切にしていること」については、「チームメンバーの一人ひとりに魂の入った強い思いを持たせること」
Q2「仕事でやりがいを感じるところは?」
A2「顧客の事業や世の中の人々の暮らしをよりよくすることに情熱を注ぐ創業者からの『日本におけるデルの大改革を任せたい』という強い期待があること」
Q3「他のメーカーと違う良さは?」
A3「一人ひとりの社員が顧客の課題解決を第一に行動している。課題解決のためにはデル以外の製品も選ぶ。『儲かるか』だけでなく、『お客さまのために必要か』という考え方で物事を判断し、高い成長をしていること」
上記の質問に加え、講義中に参加者から「学生時代にやってよかったことは?」という質問が出た。この質問に対し、平手氏は次のように答えた。
「仲間と一緒に何か成し遂げるということはいい経験だった。また、失敗をおそれないでほしい。心配ばかりしていると、慣れてきたこと以外はやらなくなってしまう」
デルのように規模が大きな企業だと、従業員でも社長に会う機会もそうそうないはずだ。川崎市立川崎高等学校附属中学校の学生にとって、社長から経営のイロハを直接聞くことができたのは、よい経験になったのではないだろうか。